ゲーム好きな子と進学塾の親和性
おおた:中学受験に絞って言うと、「受験するもの」と決めているご家庭もあれば、入口で「どうしようかな」「うちにできるかな」と悩まれるご家庭もあります。中学受験という渦に巻き込まれるのが怖い、みたいな。僕はそこはあまり深く考えず、迷いつつも中学受験が視野に入っているのであれば、中学受験専門の塾に通ってみることをおすすめします。最終的に中学受験をしなくても、塾で学ぶ経験は無駄にはならないはずだからです。できる範囲でがんばって、自信ができたらトライしてみればいい。たいがいの子どもは塾に通うと「楽しい!」って言いますよね。
小川:受験勉強ほど、努力に対して結果がわかりやすい環境ってなかなかないからだと思います。スポーツは、2カ月、3カ月で結果がすぐに出るものじゃない。評価によって結果が変わる競技もあります。でも、勉強は今日がんばったら明日のテストで点が取れますからね。同じ目標を持つ友達と集えるのも、塾の楽しみの大きな要素の一つでしょうね。僕がよく親御さんに言っていたのは、「塾の勉強って、ゲーム攻略と一緒なんですよ」ということです。学習面談で、「子どもがゲームにはまっているのが心配」という声をよく聞きましたが、「ゲームのどんなところでお子さんが一番ワクワクしているか教えてください」と尋ねると、たいていお母さんは答えられません。ゲームはよくないものと思い込んでいるから、子どもを観察するという発想がないんです。そこで、「ロールプレイングゲームでお宝ゲットしたときに燃え上がるタイプなのか、シューティングゲームで敵を倒す無双感に浸るタイプなのか、どっちですかね。 それによって勉強のアプローチが変わるので」と言うと、俄然興味が湧いて「昨日、攻略ビデオを見て、その通りやったらクリアできたと喜んでいました」と気づいたりします。僕が言いたいのは、勉強とゲームという遊びを分ける必要はないということなんですけどね。
おおた:ちなみにそういう子にはどんなアプローチが有効なんだろう。
小川:「作戦が好きな子」ということですから、理科の「光の反射」のような思考タイプ問題の考え方の手順を理論立てて解説できる先生に教わると、一気に理科にハマる可能性があります。実際、攻略本を読むなど研究熱心な子は、塾も好きになりやすいです。
勉強で子どもをつぶす親、能力を最大限に引き出す親
おおた:もともと子どもが持っている能力や興味、関心を伸ばしていけば、誰でも勉強を好きになるわけですよね。まあ、そこにどう関わるのかが難しいわけですが。
小川:子どもって、初めて見たものに対しては「なんだこれは!」と目を輝かせるじゃないですか。好奇心のかたまりですから、出会って、調べて、知って、また、出会って、調べて、知って……ということを繰り返していると、学ぶことがどんどん楽しくなります。勉強もその延長線上にあるものです。では、どこで勉強嫌いになってしまうかといえば、楽しさを感じる前に「これをやりなさい」とドリルや問題集で勉強を強制されてしまうからです。僕は、子どもにドリルを与えたいなら、親子で一緒に本屋さんへ買いに行って、子ども自身に選ばせてあげてほしいと考えています。自分で選んだものなら、子どもは喜んでやりますから。でも普通は、大人が買って与えるものだと思っている。親御さんに「それって誰かが決めたんですか」と聞くと、「だってそういうものでしょう」と。そう決まっているから、そうしなくちゃいけないと思い込んでいることが、とても多いですね。