販売元の扶桑社は1月9日付けで公式ホームページに、編集長と発行人名による謝罪文を発表。また9日までに、ランキングに掲載された5大学すべてが抗議や遺憾の意を表明した。
署名の発信者である女子大生は、9日に情報を更新。週刊SPA!の謝罪文は「『論点が全くズレている』と思っています」と書いている。さらに「私達は、お互いを批判し合うだけの非建設的な争いを望んではいません」「今回の件を発端として私達と御社で社会をこれからどう変えていけるかを一緒に考えていければと思います」と、編集部に対して対話を望んでいる。
編集者は心から「ヤレるランキング」を面白いと思っているのか
学生からの「一緒に考えていければと思います」という提案はとても面白い。週刊SPA!編集部は、学生からこのような申し出を受けること自体、屈辱に感じるだろう。
インターネット時代となり、マスコミは「唯一の発信者」の座から引きずり降ろされた。マスコミが一方的に発信し、受け手がそれを見るだけだった時代はもうとっくに終わった。今や、やり方次第で、一般人がツイッターやYouTubeやTiKToKで有名になり、影響力を持てる。子どもたちが芸能人よりもユーチューバーに憧れるように、今の若者にとってマスコミは絶対的な存在ではない。昔のように、雑誌の編集者やテレビ局のディレクターに気に入られなければ世に出ることができないわけではないのだ。編集者の目に止まる前にネット上でファンがつく作家もいる。就職先としてマスコミの人気は昔ほどではないのは周知のことだ。
誰でも抗議の声をあげて賛同を集めることができ、また自分の意見や企画を発信して世の中に提示することができる現代において、今回の騒動は、「マスコミは一体何をしているのか」を考えさせられた。
週刊SPA!の中にもいろいろな記事があり、多様な編集者・ライターが関わっているだろうが、「ヤレる女子大学生RANKING」については、どう見ても一部の読者ウケを狙った惰性記事である感が否めない。あの記事の編集担当者の意気込みと、署名を集めた女子大生、どちらの熱量が高いか。筆者は後者だと思う。
あの記事は女性蔑視であり、署名は女性蔑視を温存している社会への抗議であるとも思う。一方で、出版業界関係者は、業界に年始早々振り落とされた鉄槌だと考えるべきではないか。
長く出版不況と言われ、「とにかく売れればいい」と読者に媚びを売るのはSPA!だけではないはずだ。売るためにエロや貧困、副業、鬱といったネタを使い回す。表現の自由はあっても「売らんかな」の制約に出版業界は縛られている。貧すれば鈍する、負のスパイラルから抜けるきっかけが今回の騒動にあればいいのだが。
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