大企業の買収と方向転換
ニューヨークのファッションアイコン的存在だったヘンリー・ベンデルが、方向転換したのは、1985年に多角経営のアパレル企業、Lブランドが買収してからのこと。
57丁目から5番街の現在の位置に移転して、1991年に改装再オープン。
2008年からは、全米のショッピングモールなど合計23箇所にヘンリー・ベンデルの支店を増やしていった。ニューヨークに来なければ手に入らなかったトレードマークのこげ茶と白のストライプのショッピングバッグが、全米で入手できるようになったのである。
2009年にはアパレルから手を引き、2014年からは自社のブランド物のアクセサリー、バッグ、香水のみ取り扱うようになった。
そして2018年9月、Lブランドはヘンリー・ベンデルの閉店を公式に発表。同社が所持するランジェリーメーカー「ヴィクトリアズ・シークレット」など、より利益率の高いブランドに集中するため、という。
オンラインショッピングとの競争に負けた、あるいは女性たちがそこまでファッションにお金をつぎ込まなくなった、などその原因は色々と取りざたされている。
だが筆者が思うに、地方のショッピングモールで手に入るようになったヘンリー・ベンデルは、かつて「ニューヨーク限定」であったブランド力を失ったのではないかと思う。
苦戦するデパート業界
もっとも苦戦していたのは、ヘンリー・ベンデルのみではない。その2週間前の1月2日には、やはり104年続いた老舗のデパートメントストア、ロード&テイラーが五番街の39丁目にあったフラッグシップストアを閉店させた。
日本でもデパートの経営不振、合併などが取り沙汰されてきたが、ニューヨークでも事情は変わらない。巨大なフロア面積が必要なデパート運営は、マンハッタンの不動産が高騰している今の時代において、すでに過去の遺物になりつつあるのだろうか。
こうした老舗が、どんどんと姿を消してマンハッタンの町並みも変わっていく。
ロード&テイラーの建物には、WeWorkというオフィススペースのレンタル会社が入ることが決まっている。
ヘンリー・ベンデルのほうは、現在まだ未定。だがいずれもランドマークとして登録されているので、建物自体はそう簡単に解体されることはないであろうことが、唯一の救いかもしれない。
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