2024年4月24日(水)

使えない上司・使えない部下

2019年1月30日

周りを理解し、共感する力、
周りから理解してもらい、共感される力

木元哲也さん

 4年間、社員たちと一緒になり、仕組みを新たに作り直さないといけないという思いで走ってきました。そのために、社員に共感する、社員から共感されるという関係をつくることを大切にしてきました。「共感する、共感される」はソニーの頃に管理職の研修で学んだことでもあります。

 共感という点でいえば、私が40代のころ、たいへんに優秀な男性社員がいたことを思いおこします。当時、彼は30代前半。情熱家で、仕事に関する知識が豊富で、協調性もあります。バランス感覚が実に優れていました。彼はまだ若かったこともあり、職位が上の人にひるむことなく、反論することも時々ありました。それでも、上の人は抑えつけることをしませんでした。「この部下に言われるならば、仕方がない」と感じていたのではないかな、と思います。

 彼は周囲に共感することができるし、多くの社員から共感されるだけの人間力を兼ね備えていたのでしょうね。その後、同世代の社員よりも早く昇格していきました。今も活躍していると聞きます。私は、彼がいずれはソニーの社長になるのかもしれないと思っています。

 一方で、周りに共感しないし、共感されない男性社員もいました。優秀な一面があり、的確な意見などを言うこともあるのですが、周囲の社員に感謝をしないのです。信念を持ち、ひとりで黙々と最後までやり遂げるタイプでもないようでした。

 その後、退職しました。周りにシンパシーを感じることなく、感謝することもないので、チームの中で大きな仕事ができなかったのではないでしょうか。そこで不満がさらに募り、周囲にますます共感することをしなくなったのではないかな、と思います。こういう人は、会社という組織では大きな活躍をすることはできないのかもしれませんね。自分が周りを理解し、共感する力、そして周りから理解してもらい、共感される力は大切です。私が社長として大事にしていることでもあります。

 私や社員が互いに理解し、共感し合う風土にするために2014年から試みている改革の1つが、3カ月ごとに全社員を対象に行っている「ESアンケート」(従業員満足度調査)です。特に上司や部下、配属部署や他部署の社員とのコミュニケーションの現状などを確認するために実施しています。問題を可能な限り早く見つけ、解決に向けて迅速に対応をしたいのです。問題の状況によっては面談をすることもあります。

 各々の社員は、自分の書いたことが非公開にされ、機密として守られることを信じて書いています。私の方から社員の名を伝えることはしません。上司にはたとえば、若い社員がこういう課題を抱え込んでいるようだから、気を配ってあげてほしいと言うようにしています。

 私のリーダーシップは、父のそれとは正反対のように思います。父はある意味でワンマン社長でした。父の体が弱っていたこともあり、この4年間、ぶつかることはありませんでした。私が30~40代で後を継いでいたら、状況は変わっていたかもしれませんね。私自身、そのころは中小企業の経営に自信があまりなかったのです。50歳で社長になったことがよかったのかもしれません。

 ソニーのころの私? 「使える」とはあまり言われたことがないですね。私はもう離れた身ですから、ソニーの頃の自分についてあれこれ語ることは避けます。今は、木元省美堂やここで働く社員たちを心から誇りにしています。

  
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