事業再生の難しさと循環する共感経済
売上や企業陣容や規模が震災前以上になっているところもある一方で、紹介した以外にもすでに事業清算を迎えたところや解散した法人もある。解散にまで至らなくても、事業の低迷から基金ジャパンとしては債権放棄しなければならないところも割合が高くなってきている。
同団体の事業報告書には「東北においては社会全体の関心が一層低下している傾向にあります。インフラの復興は達成されたものと考えておりますが、本当の意味での復興を超えた創造的な地域基盤の復興はまだまだであると考えており、地域全体の復興の達成をめざして、継続支援を実施していく所存です」とある。
事業支援先も単なる自社の事業というだけでなく、地域経済の循環を進めるためにはとか、雇用の受け皿となるためになど地域経済の中での立ち位置をしっかりと見据え、いわば「パブリックプライド」をもち、公器として、地域のなかで果たす役割が強くにじみ出たものになっている。
また、基金ジャパンからは助成金・補助金といった一方通行の資金支援ではなく、償還を前提としているため、いわゆるフリーライド(ただ乗り)ではなく、事業を再生させてしっかりと稼いで、地域に再投資する、いわば受けた恩を次世代に受け継いでいく役割もしっかりと認識されている。
ただでさえ、市場の変化など厳しい経営環境に置かれている事業者のなかで復興後の事業再生にはより一層の困難が伴う。支援金や復興特需はあったにしてもそれが長く続くものではない。そして手をこまねいているわけではないが、未だ、長いトンネルを抜けることができず、必死でもがいている事業者もいる。
国が母体となって用意されたグループ補助金や水産加工業に対する補助金は、事業資金の7-8割が補助される等、債務の帳消しとともに東北の地域には手厚い金融的な支援となっていた。中には自治体から補助金が出るのはこれが最後だからとせかされて、充分な見通しも立たないままに申請して、新しい工場は稼働したが回復しない市場の需要に、身の丈以上の自己負担分の負債は重くのしかかり、返済に苦しむところも少ないと聞く。
復興の道のりは遠いと言ってしまえばそれまでだが、震災後に生まれてきた状況やそれ以前から人口減少や産業の衰退など元々抱えていた課題や経営環境の厳しさなどが事業者には重く何重にものしかかってきている。だからといって追加措置としての重ねての補助金は、単なる延命措置に過ぎないように思う。手前味噌ながら基金ジャパンが、資金的な支援を受けると同時に、経営的な指導を提供するのは、支援はいつかは終わるので、その間に経済的にも自立的基調が整えようにを目指しているからだ。
震災以降の一定期間を迎えたからこそ、次の段階としての新しい支援スキームなどを検討すべきであると考えている。そうした意味合いでも、震災からの道のりはまだまだ長い目で見守っていかなければならないと考える。
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