共産党が宣伝した「ソフトパワー」の皮肉
「小悦悦事件」発生2日後の10月15日、共産党は第17期中央委員会第6回総会(6中総会)が開幕し、小悦悦はこの会議を見届け、閉幕3日後に短い人生を終えた。
6中総会の議題は「文化体制改革」で、「道徳」が大きな焦点となった。6中総会で採択された「決定」は、「為人民服務」の象徴として政治キャンペーンとなった1960年代の模範兵士「雷鋒に学べ」までいまさら持ち出し、「社会主義の栄辱(栄誉と恥辱)観宣伝教育を深く展開し、中華の伝統的な美徳を高揚し、市民の道徳建設プロジェクトを推し進め、社会公徳・職業道徳・家庭美徳を強化しなければならない」と訴えた。
共産党が懸念を高める「道徳危機」がまさに現実の問題として議論している最中に出てきたのが「小悦悦事件」だった。
6中総会のもう一つの大きな焦点が、中国文化を世界に広めるためのソフトパワーの増強だったのは皮肉だった。なぜなら、6中総会の開催中、内外のメディアはこぞって世界に「小悦悦事件」を伝えたからだ。そして国際社会が認知したのは、道徳を喪失させた中国の国家体制の現実だった。
小悦悦は、胡錦濤指導部に対し、危機を高めるだけで何の解決策も見いだせない共産党が存続するために何が必要なのか教えたのではなかろうか。