2024年4月16日(火)

補講 北朝鮮入門

2019年3月14日

社会主義国間の協力の可能性と限界

 金正恩委員長としては、まずは中国に現状を報告して助言を受けることになろう。昨年のうちに約束されていた韓国の文在寅大統領との4回目の会談は実利を伴わないことから遠のいたかのように見えるが、相談するという意味合いで電撃的に開催することも考えられる。そのうえで、親書外交などで対米交渉を継続させ、9月下旬のニューヨークでの国連総会を契機にした第3回米朝首脳会談を目指すなり、北京に対して非核化の本気度を示しつつ制裁を事実上緩和してもらうなり、といったことも視野に入ってくる。いずれにせよ紆余曲折を経ることになり、時間はかかりそうだ。

 いまや世界に社会主義国は5カ国しかない。金日成首相(当時)以来55年ぶりにベトナムを訪問してグエン・フー・チョン共産党書記長兼国家主席と会談したことにより、金正恩委員長自身はラオス、キューバを含めて全ての社会主義国の指導者と面会経験を持ったことになる。

 今年の「新年の辞」では、昨年の3回にわたる訪中とキューバ代表団の訪問に触れ、「社会主義国間の戦略的な意思疎通と伝統的な親善協助関係を強化するうえで特記すべき出来事」と評価するとともに、「自主、平和、親善の理念に基づいて社会主義国との団結と協力を続けて強化」することが訴えらえた。金正恩委員長がこのような発言をするのは初めてのことであり、第2回米朝首脳会談のベトナム開催を念頭に置いていた可能性が高い。

 実際に、社会主義国ベトナムでの開催は金正恩政権に味方した。金正恩委員長の帰国後に放送された朝鮮中央テレビのタイトルは、金正恩委員長が「ベトナム社会主義共和国を公式親善訪問された」というものだった。78分間の番組で米朝首脳会談に割いたのは11分間だけだ。社会主義国であるベトナムとの友好関係を謳い、その成果を誇示することで、今回の外遊が大成功だったと国内向けに説明したのである。

 金正恩委員長が対米交渉への意欲を失えば、社会主義国で、核保有国でもある中国に対して「完全な非核化」の姿勢を示し、知恵を借りることになろう。北朝鮮と国交のある中国やロシアの専門家による査察を受け入れて非核化の「本気度」を示そうとすることも考えられる。中露に加え、平壌に大使館を置く西欧諸国(英国やドイツ)の専門家を加えることもありえなくはない。そうした姿勢を見せることによって、中国による実質的な制裁緩和を期待することもできる。実際にこれまでも中国は、国連安保理の制裁決議を自らの判断によって履行してきた経緯がある。ただし、対米関係の改善なしに中国を含む社会主義国との協力だけを進めることには限界がある。長期的な展望を描くためには、やはり米国との関係がカギとなるはずだ。


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