2024年4月20日(土)

補講 北朝鮮入門

2019年3月14日

トランプ大統領への配慮が目立った北朝鮮メディア

 最後に、会談翌日の3月1日付『労働新聞』報道の重要な部分を紹介しておきたい。北朝鮮メディアの記事を読み慣れていないと取っつきにくいかもしれないが、要するにトランプ大統領に配慮し、対話継続の方針を示す内容だ。

「朝鮮半島の緊張状態を緩和して平和を推し進め、完全な非核化のために双方が傾けた努力と主導的な措置が互いの信頼を導き、朝米両国間に数十年間持続されてきた不信と敵対の関係を根本的に転換していくことで重大な意義を持つことについて認識を同じくした。」

「朝米の最高首脳の方々は、二回目となるハノイでの対面がお互いに対する尊重と信頼をさらに厚くして両国関係を新たな段階へと跳躍させることができる重要な契機になったと評価された。」

「敬愛する最高領導者同志(金正恩委員長)とトランプ大統領は、朝鮮半島の非核化と朝米関係の画期的発展のために今後も緊密に連携していき、ハノイ首脳会談で論議された問題解決のための生産的な対話を継続していくことにされた。」

「敬愛する最高領導者同志は、トランプ大統領が遠方から来て今回の対面と会談の成果のために積極的な努力を傾けたことに謝意を表され、新たな対面を約束して惜別の挨拶を送られた。」

「全世界の大きな関心と期待の中で開催された第2回朝米首脳対面と会談は、朝米関係を両国人民の利益に合うよう発展させ、朝鮮半島と地域、世界の平和と安全に貢献する意味ある契機になる。」

 このような『労働新聞』の論調は国民向けのメッセージとして重要な意味を持つ。ただし、首脳会談翌日の記事であるから軌道修正が間に合わなかっただけだとも考えられる。首脳会談に臨んだ金正恩委員長の権威を傷つけることはできないし、政策変更の指示もこの時点で出ているはずがない。

 だから、会談直後の論調を絶対視することはできず、今後の論調変化を注視する必要がある。3月8日付『労働新聞』は署名論評で、米朝首脳間に「合意文が無く終わった」事実について初めて報じているが、安倍首相への批判が主題であり、対米政策の変化は垣間見られない。また、3月6日に平壌で開催された第2回全国党初級宣伝活動家大会で金正恩委員長の書簡が発表されたが、そこでは「今後、国の対外的環境と対外経済活動が改善される」可能性についても触れられている。

 3月10日の代議員選挙では、これまで代議員だった金正恩委員長が選出されなかった。これは、4月に開催される最高人民会議(国会に相当)第14期第1回会議で金正恩委員長の職位を含む国家機構に関する憲法改正が行われることを示唆するものだ。その段階で対米戦略の方向性が見えてくるかもしれない。結局は党政治局会議など重要会議が開催されて政策変更が伝えられることになるだろうし、こうしたものが、平壌の意向を読み解く上でのメルクマールになろう。
 

  
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『新版 北朝鮮入門』(2017年1月13日刊行)。2010年に出版した「LIVE講義 北朝鮮入門」を全面改訂し、金正恩時代の北朝鮮像を描く。核・ミサイル開発などの最新データを収録している。

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