2022年12月4日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年3月21日

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 第3は、一部核施設の閉鎖とICBM廃棄の取引を受け入れなかったことである。もし受け入れていたら、米国と同盟諸国との安全保障は分裂し、同盟の信頼は大きく損なわれただろう。トランプの記者会見では、日本など同盟諸国への配慮も滲み出ていたように見えた。

 第4は、米国は、全ての核・ミサイルの廃棄の後に、制裁が解除されるとの考え方を北朝鮮に示し、グランド・バーゲンしたとされる点である。実施は段階的に行っても良いが、最終目標を含む基本的なビジョンは双方で一括合意しておく必要がある。そのためにはグランド・バーゲンの考え方が欠かせない。

 第5に、トランプは寧辺に関連して、他の秘密濃縮施設の存在を北朝鮮に突き付けたことである。これに対して金正恩は驚いていたとトランプは述べた。米国の諜報に、北朝鮮は大きな衝撃を受けたのではないか。

 ハーバード大学のアリソン教授は、ハノイ首脳会談は1986年のレイキャビク米ソ首脳会談に酷似しており、ハノイ会談につき「歴史は非核化に向けての重要な一歩になった会談として記憶されるのではないか」と、3月2日付のナショナル・インタレスト誌で述べている。興味深い見方である。ゴルバチョフからの「美しい書簡」によりレーガンはレイキャビクに行く、しかしゴルバチョフは核軍縮合意のためには米国が SDIを止めることが必要と主張する、レーガンは会談を打ち切り帰国する、その後シュワルナゼ等のレベルで協議が続き、ソ連が立場を変え、最終的に1年後にINFの核軍縮が合意されることになった。

 今後、ハノイの米朝首脳会談を踏まえて議論を推進することが重要である。レイキャビク会談後、ソ連は2カ月かけて政策を練り直した。米国の政治日程を考えれば、交渉の窓は長くはない。米国は例えば李容浩か金英哲の訪米を求め、交渉を続けるべきである。必要であれば、日本等が座敷をかすことも考えられるのではないか。グランド・バーゲンには日朝国交正常化等あらゆる事項を含めた方がよい。それは北朝鮮にとっても利益がある筈だ。米中が疎通することも重要である。金正恩を交渉から離脱させないようにする必要がある。他方、 3月5日には、米国の研究グループが、昨秋北朝鮮が廃棄を表明していた東倉里ミサイル発射場で施設立て直しの兆候が見つかったと発表した。70時間に近い列車旅の中で、金正恩は何を思いながら帰国したのであろうか。

  
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