台湾総統選を見据えた「熱戦」に注目
一方の蔡英文氏は、昨年11月の統一地方選の大敗後、それまではあまり受けなかったメディアのインタビューや記者会見を積極的に受けるようになり、フェイスブックなどでも活発に情報発信するなど、従来の「内向き」批判の解消に努める姿勢を見せている。また、中国が台湾への統一攻勢を強めるなかで、蔡英文総統も厳しい対中姿勢を見せており、一時に比べて、党内の求心力が回復しつつある傾向もある。それだけに、人気のある頼清德氏との競争となるのは避けて安全に総統選に臨みたかったとみられる。
現在、台湾の政治家のなかで最も勢いのある国民党の韓国瑜・高雄市長は、対中関係の改善を掲げて、対中貿易の振興による農民や漁民の票までも集める戦略をとっている。そのなかで自らを「台湾独立の仕事に一生を捧げている」と公言している頼清德氏に対して、国民党や中国政府がネガティブキャンペーンを仕掛けてくる可能性もある。人気が低迷する蔡英文氏が相手のほうが国民党は戦いやすい、という計算が働くに違いないからだ。
いま、野党で政権奪還を狙う国民党は、前党主席の朱立倫氏や現党主席の呉敦義氏、元立法院長の王金平氏、前総統の馬英九氏、そして、人気ナンバーワンの韓国瑜氏などが候補として取りざたされ、乱戦気味になっている。総統候補選びの党内手続きが民進党よりも時期的に遅れている国民党は、この民進党の総統候補選びの展開を慎重に見極めていくだろう。
虎視眈々と立候補の機会を狙っていると見られる第三勢力の柯文哲・台北市長の動きも、民進党の候補者が蔡英文氏になるか頼清徳氏になるかで影響を受けてくるだろう。来年1月が想定される台湾総統選の流れを決めるうえでも、民進党の候補者選びは見逃せない熱戦となりそうだ。
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