11月23日の夜、台北市のランドマーク101ビルに光り輝いていた「記得投票(投票を忘れずに)」「公民權益(国民の権利と利益)」という文字をまぶしく見上げた。1987年の戒厳令解除以降に民主化が進んだ台湾では、「自分たちが台湾の未来を決める」という当事者意識が高く、自分の一票を行使するために海外からわざわざ帰省する台湾人も少なくない。今回行われた「107年地方公職人員選舉」は通称「九合一選挙」と呼ばれ、全国の県市町村における首長から県・市会議員・町内会長までを決める、日本における統一地方選にあたる。
11月24日の投票日には、朝から投票所にたくさんの行列ができ、いつもながら民主に対する台湾の人々の意識の高さを感じさせた。激烈な接戦となり翌日未明にまで当確がもつれこんだ台北市長選以外は当日中に開票を終え、与党・民進党の惨敗が明らかになったが、もうひとつ「九合一」選挙で注目されていたのが「公民投票」(国民投票)である。
2017年の公投法改正で発案のハードルが大幅に引き下げられた結果、10項目もの案が乱立した。我が家にも家人の投票用紙が届いた際、その稀にみる分厚さに驚いたものだが、これらが投票行為を煩雑にし、どの投票所も平均して1~2時間もの待ち時間となった。そうした予想外の状況においても、投票率は66.11%と依然として高く、冷静に自分の「一票」の権利を行使された台湾の方々に、まずは敬意を表したい。