2024年7月16日(火)

栖来ひかりが綴る「日本人に伝えたい台湾のリアル」

2018年11月30日

それでも感じた「未来への期待」

 しかしまた、今回のことで起こったのが悪いことばかりだったとは思わない。台湾社会の保守性を間近に見ながら外国人として暮らしている筆者から見れば、公民投票が可視化した、同性婚へ賛意を示した3分の1の投票者は決して少ない数ではないと思う。投票日の2日前に公開された台湾の老舗醤油メーカー「金蘭醤油」のCMは、子供のいるレズビアンのカップルによる暖かい家庭風景を描き、同性婚を支持する立場をつたえ、作品の質の高さも相まって大きな話題となった。


 保守的な消費層が少なくないと思われる老舗の食品メーカーが、こうした表明をするのは異例だ。加えて、今年はじめて公民投票に参加した18歳の若者への模擬投票の結果によると、賛成派が過半数を大きく上回っていた情報もある。

 小さなろうそくの炎であっても消えることがなければ、いずれは大きな氷でも溶かす。あちらこちらに、変わりゆこうとしている等身大の台湾社会を垣間見ることが出来、台湾の未来についてまた一層と考えさせられた経験であった。セクシャルマイノリティ―の人権運動の第一人者である祁家威は、選挙後のインタビューでこう答えている。

「30年前に運動を始めたときは、支持してくれる人々がこんなに増えるなんて思いもしなかった」「若い仲間たち、だから決して命を粗末にしないで。未来はきっとよくなるから」

「私はキリスト教徒です。婚姻の平等を支持します」と書かれたプラカードを掲げて歩く若者の姿も(写真:筆者提供)

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『台湾と山口をつなぐ旅』
栖来ひかり 著(西日本出版社)
2018年11月27日発売

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栖来ひかり(台湾在住ライター)
京都市立芸術大学美術学部卒。2006年より台湾在住。日本の各媒体に台湾事情を寄稿している。著書に『在台灣尋找Y字路/台湾、Y字路さがし』(2017年、玉山社)、『山口,西京都的古城之美』(2018年、幸福文化)、『台湾と山口をつなぐ旅』(2018年、西日本出版社)がある。 個人ブログ:『台北歳時記~taipei story』


  
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