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2019年4月9日

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カギ握るスレイマニ将軍

 イラン側もすぐさま、トランプ氏に反撃した。イラン最高安全保障委員会が8日、中東を統括する米中央軍とその関連機関を「テロ組織」と指定。「テロ思想に基づく政策を進め、無辜のイラン人やイランの安全を脅かしている」と非難、今回の決定がもたらす“危険な事態”の責任は米国にあると警告した。

 革命防衛隊はイラン革命時の79年に発足。当初は故ホメイニ師ら指導部の親衛隊的な性格が濃かったが、その後イラン最強の実力組織にのし上がった。勢力は12万5000人。配下に100万人の動員力を誇る人民動員軍「バシジ」を持つ。規模は国軍の方が大きいが、軍事、政治、経済など国家全般に及ぼす影響力ははるかに国軍を凌ぐ。組織的な密輸に手を染めているとの情報もあり、同国では一種の聖域だ。

 最高指導者ハメネイ師に忠誠を誓い、穏健派のロウハニ大統領と対立する保守強硬派でもある。海外への影響力拡大に力を注ぎ、レバノンではシーア派武装組織ヒズボラを、イラクでもハラカト・ヒズボラなど各種民兵組織を発足させ、内戦のシリアにも、アサド政権を支援するため、約2000人を派遣している。イエメンの反政府勢力フーシ派も支援している。

 こうした海外作戦の戦略の元締めが革命防衛隊のエリート部隊「コッズ」の司令官カセム・スレイマニ将軍だ。イラン・イラク戦争の英雄であるスレイマニ将軍はシリアやイラクの前線に時折姿を見せるなどその行動は神出鬼没として知られる。

 将軍はイラン、イラク、シリア、レバノンというイランから地中海に至る“シーア派三日月ベルト”の死守を戦略の根幹に据えており、2003年の米軍のイラク侵攻の際、イラクに民兵組織を次々に立ち上げて米軍への攻撃を繰り返えさせた過去がある。今回の米国による革命防衛隊の「テロ組織」指定の後も、その対外戦略は揺るがないと見られるが、イランの出方のカギを握っている1人であることは間違いない。

 トランプ大統領はネタニヤフ氏の選挙のため、最終的には自らの再選のために革命防衛隊の「テロ組織」指定に踏み切った。これまでは国防総省の反対を考慮してテロ指定を抑制してきたが、一気にその一線を越えてしまった。「中東の米駐留部隊が報復される懸念が一段と高まった」(アナリスト)。選挙のための“火遊び”になる恐れは十分にある。

  
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