以下のような事例が、何よりもそのことを物語っている:
(1)Trump Airline
トランプ氏は去る1988年、ワシントン~ニューヨーク~ボストン間のシャトル便を経営するEastern Airlineを2億4500万ドルの融資を受け買収、機内中に派手な「TRUMP」マークを張り付けたり、トイレを金メッキ装飾にするなどデザインを一新した。しかし、2年後には利用客が減少し始め、毎月100万ドルの利息支払いもできなくなったため破産宣告、結局銀行融資グループへの経営権委譲を余儀なくされた。
(2)カジノ事業
1991年、アトランティック・シティに、約30億ドルの融資を受けカジノ施設「Trump
Taj Mahal」 を大々的にオープンしたが、まもなく経営難に。同時に他の同氏経営の2カ所のカジノも採算がとれなくなり、2004年には3カ所合わせ18億ドルの負債を抱えたまま破産宣告に追い込まれた。
(3)モーゲージ・バンク
2003年3月、不動産・住宅用金融サービスを専門とする「Trump Mortgage」社を設立、当初は25州に支店を構えるなど、住宅ブームに乗った急成長会社として脚光を浴びたが、社長に起用していた金融マンの信用失墜などにより、業績が悪化、2007年9月には営業停止となった。出資金として当初融資を受けた2500万ドルの債務が現時点で返済済みかどうかは不明。
(4)トランプ・タワー・タンパ
2006年3月、フロリダ州タンパ市中心街に52階建てコンドミニアム「Trump Tower
Tampa」の分譲を開始、購入予定者からの手付け金が集められたが、工事中に建築安全基準上の問題が浮上、建築中止となった。トランプ氏は施行主に対し、名義貸しをしただけで直接事業には携わっていなかったが、トランプ・ブランドにつられ手付け金を取られた何人かの市民が損害賠償を請求する訴訟対象となっている。
(5)Trump University
2005年5月、トランプ氏本人が不動産経営者養成、個人資産運用のノウハウ指導などを目的とした「Trump University 」をニューヨーク市内に開校。一時は会社経営を夢見る受講者たちが各地から集まったが、講師陣の質の悪さ、資格取得のための科目設定の不備、法外な受講料などが表面化、ニューヨーク州検察当局が立ち入り捜査を行うなどの騒ぎとなった。今なお、受講生たちが大学を相手取って訴訟を起こすなど、トラブルが続いており、「大学」とは名ばかりの“トランプ商法”に対する評判は落ちる一方だ。
(6)Plaza Hotel 買収
1988年3月、ニューヨークきっての由緒あるホテルとして世界的に有名なプラザ・ホテルをウェスティン・ホテル・グループから3億9000万ドルで購入。しかし、改装などに多額の資金を注ぎ込んだにもかかわらず、巨額の借金返済に見合うだけの収益につながらず、ホテルの客室の半分近くを高級マンションとして売却。最後はホテル全体を銀行融資団に引き取ってもらう形で、1998年に破産手続きを余儀なくされた。
救世主となったロシアマネー
上記のように、トランプ氏は1990年代初め、父親が残した遺産を担保にして、積極的に事業拡大に乗り出したものの、結果的に破産や数々の損害賠償訴訟などに見舞われた。そして90年代末までには、受け継いだ資産のほとんどを失ったため、新規事業も停止状態がしばらく続いた。アメリカのほとんどの大手銀行からは、融資を申し込んでもほとんど相手にされなくなった。
しかし、やがて21世紀に入り、思わぬところから“救世主”が現れることになった。それがロシアだ。ロシアや旧ソ連邦の一員だったウクライナなどの資産家たちが、トランプ氏に目をつけ、資金援助し始めたのだ。