アメリカでは彼に金を貸す人がひとりもいなくなった
ロシアが、事業家としてのトランプ氏復活に果たした役割について追跡調査した米誌「フォーリン・ポリシー」は、「タイタニック号沈没」の状況に譬え「乗客たちが次々におぼれ死んで行くときに、突然、海中でもがいていたトランプ氏だけが救い出された。まるで人工衛星のような物体が舞い降りたかのようだった」と報じている。
また、総本山「トランプ・オーガニゼーション」の建設プロジェクトに深く関わって来た建築家のアラン・ラピダス氏も「トランプ氏は1990年代から2000年代初めにかけて金融取引トラブルがあいついだ結果、アメリカでは彼に金を貸す人がひとりもいなくなった。その後の事業はほとんどがロシアの資金だ」と同誌に語っている。
興味深いことに、トランプ氏側もこれまで、ロシアからの積極支援を事実として認めてきた。
長男のドナルド・ジュニア氏は去る2008年、投資家たちを集めた会議で「ロシア人投資家たちの資金は、われわれが所有する幅広い資産のうち、不釣り合いなほど大きな部分を占めている」と語ったことが知られているほか、次男エリック氏は2014年、ゴルフ雑誌記者に対し「『トランプ・オーガニゼーション』は財政危機に直面していたころに、ロシアのおかげで事業拡大できた。われわれはアメリカの銀行に頼っておらず、必要な資金はすべてロシアから来ている」とさえ告白している。
ロシア・マネーのトランプ不動産事業に対する大規模投資については、「ロシア疑惑」を捜査してきたモラー特別検察官チームも特別の関心を示し、ニューヨーク連邦地検に追跡捜査を委託、その後は同地検が引き続き実態解明を急いでいる。
下院各調査委員会はこうした背景の下に、今後トランプ人脈の重要人物を今後できるだけ多く公聴会に喚問、詳しい証言を求めるほか、これまで厚いベールに包まれてきたトランプ氏の納税申告関係書類がロシア・コネクション解明の重要なカギになるとみて、その提出をムニューチン財務長官に求めている。
しかし、大統領の意を受け同長官は提出を拒否し続けており、このままこう着状態が続いた場合、最後は議会対ホワイトハウスの法廷闘争に発展する可能性が大きい。
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