2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2019年5月29日

自己研さん積むベテランを処遇
シニア営業で稼いで実を取る

(出所)厚生労働省「高年齢者の雇用状況」(2018年)を基にウェッジ作成 ※全国の常時雇用31人以上の企業15万6989社が回答 写真を拡大

 国が雇用を義務付ける65歳を超えてシニア活用を進める企業が増えている。厚生労働省が18年6月に集計した「高年齢者の雇用状況」によると、31人以上を常時雇用する全国15万6989社のうち、66歳以上を雇用する企業は27・6%にのぼる。

 大和証券は17年7月から、支店の営業職社員「上席アドバイザー」を対象に70歳だった再雇用年齢の上限を撤廃した。一定以上の人事評価を得られれば、1年ごとの雇用契約で年齢の上限なく希望する支店で働くことができる。週5日のフルタイム勤務だ。

 「高齢のお客様のすべてのニーズに若い社員がこたえるのは難しい。家族や孫といった身近な話題や悩みに同世代として耳を傾けながら相続や資産運用などの相談にのり、顧客満足度を高め、収益拡大を図る」と人事担当の白川香名・常務執行役は語る。同社の顧客の多くは60歳以上の高齢者層。貯蓄、投資金額が多く、相続などで多額のお金が動く重要な市場となっており、そこをシニア社員にアプローチさせようという戦略だ。

 単に雇用期間を延長するだけではなく、意欲を持って働き続けられるよう人事制度も改めてきた。給与面では、55歳で年収が1割ほど下がっていたのを、優秀な支店の営業社員は40代後半から上席アドバイザーとし、給与水準を維持するように改めた。現在、50代以上の全社員約1750人いる中で186人がこの指定を受ける。

 また、「昇格を諦めた40代や50代の社員が自己研さんを積まなくなる」(白川氏)という課題もあった。そこで、45歳以上を対象とした研修プログラムも拡充させ、税金や不動産といった専門知識から、ビジネスマナー、英会話、マネジメント研修まで多様なカリキュラムを用意し、一定のスキル向上を実現している社員を給与面などで優遇する仕組みも取り入れた。

 雇用期間の延長や給与の引き上げ、研修拡充など人件費は増えるが、「営業面でのメリットが大きい」(白川氏)という。年齢にかかわらず社員に目標を持たせ、成果に応じて処遇することで結果的に業績を伸ばす、というシニア活用術は、他の企業でも参考になるだろう。


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