Wedge REPORT

2019年5月29日

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Wedge編集部 濱崎陽平 吉田哲

【COLUMN】  企業がシニアを〝ワンポイント活用〟
 企業が社外のシニア人材を事業や業務ごとにピンポイント活用する潮流が見られている。

 オフィスプリンターや計測機器を扱う電気機器メーカーのコニカミノルタにとって異色の商品が2018年1月に発売された。世界で初めての体臭を測定できる装置「クンクンボディ」。これは、シニアの経験と知識に助けられて成就していた。

 自社技術に依存しない事業開発を図ろうと、人の嫌な臭いだけをかぎ分ける商品を構想した。ただ、臭いに関する専門家は社内に皆無。そこでスポットコンサルティングの「ビザスク」を活用し、臭気判定士や調香師らに話を聞いた。その中で、商品実験の方法などを手取り足取り教えたのが、ガス関連企業OBの60代の男性だった。

 男性はガス供給システムを企業に導入提案する業務に長年従事。同社は臭気実験の過程で硫黄化合物など危険物も取り扱うことになり、男性が実験室を訪れ、専門的な臭気実験の方法をアドバイスした。発売前からインターネット上で話題を呼んだ商品は、シニアの知識と経験を借りて誕生していた。

雇用ではなく仕事の「外注」
 ビザスクによると、新規事業立ち上げなどでのスポットコンサル利用はトヨタや三菱電機、ライオンといった大手企業にも広がっている。企業は始めようとする事業に対し、市場ニーズや業界特有の知識を1時間で得ることができる。正式にコンサルを頼むよりも簡易で安価な上、スピード感を出すことができるという。

 企業にコンサルティングするビザスクの登録者が毎月2000人ほど新たに登録される中で、大手企業をリタイアしたシニア層も増えてきている。「企業での活動経験で培われた知識と経験には一定の需要がある」とビザスク広報担当者は語る。

 60歳以上のエキスパートやマネジメント層専門の求人サイト「シニア活用.com」では、登録企業の約9割が業務委託の雇用形態を取っている。企業は経理や建設現場監督といった個別の仕事を、サイトを運営するジーニアスへ発注し、ジーニアスがサイト登録者へ業務ごとに請け負わせる。サイトには、60歳以上が常時5000人ほど登録しており、登録者は受託した業務に必要な範囲で働くため、フルタイムとは限らない。そのため、同じ時期に2、3社業務をかけ持つ人もいるという。

 ジーニアスの三上俊輔社長は「企業は人を雇うというよりも、仕事を外注しているという意識。今すぐにやってほしい業務があるときに、専門スキルがあるエキスパートに求人が入る」と話す。専門知識や経験をスポットで求めるマーケットが広がりをみせることは、シニアにとって、仕事を得るチャンスは高まる。ただ、企業がシニアを雇用する理由がますます薄れていくため、シニアにとっては諸刃の剣となるだろう。

現在発売中のWedge6月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■漂流する部長課長 働きたいシニア、手放したい企業
PART 1   培ったスキルを生かし新天地で輝くシニアたち
PART 2         シニアにもう一花咲かせる人事戦略が企業を変革する
PART 3         60歳以上の戦力化を図り新・日本型雇用の創造を
PART 4         シニアを不幸にする企業頼みの社会保障改革

  
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◆Wedge2019年6月号より

 
 

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 
 

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