2022年12月3日(土)

立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2019年5月18日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

棍棒を持って、穏やかに話し合おう

 「もし、戦争が北方領土を取り返す唯一の手段だとすれば、北方領土を放棄するか」という問いに変えられた場合、団長にとってさらなる残酷な「拷問」になりかねない。これを承知の上で、あえて私が提案したのは、どうしても、議論が必要だと考えたからだ。

 前述した通り、法学的な「領土」の研究が少ないのは様々な理由があろうが、この探究は憲法学の専門家に譲りたい。しかし、領土問題は政治や外交上において実務的課題として常に存在している。その取扱いはどのような基準にすればいいのかという議論はもはや、先送りにできない、国家基盤にかかわる重要なアジェンダである。

 丸山氏の質問方法は非常にまずかった。だが、その質問の趣旨が、領土保全の手段を問うところにあるとすれば、意義を否定できないものであろう。本人に対するある程度の処分はあってしかるべきだが、だからと言って、連座して提起された問題の本義を見逃したり、抹殺したりしてはならない。むしろこの際、丸山氏の間違った表現や質問方法と切り離して、いまだからこそ、この問題と堂々と向き合って議論すべきではないかと思う。

 領土保全は、国家同士の力関係に依存している。ある意味で、戦争を放棄し防衛を他国任せにしている力の弱い日本はそもそも、軍事強国のロシアと同じ土俵にすら立てない。この現実を直視したうえで、まず対等に話し合えるためにも、日本自体の強化は欠かせない。これはすなわち安易に戦争という手段を講じるわけではない。この辺は、丸山氏の幼稚さが際立っていた。

 「強化」とは、何か?

 西アフリカにことわざがある。「Speak softly and carry a big stick, you will go far(大きな棍棒を持って、穏やかに話し合おう、それで言い分は通る)」。米国のルーズベルト大統領はこのことわざを借りて「Big Stick Diplomacy(棍棒外交)」を作り上げたわけだ。大きな棍棒は殴り合うためのものではない。穏やかに話し合って、言い分を通すための道具なのである。丸山氏は、「棍棒をもって殴り合う」ことを選択肢にした時点で間違っていたのである。

 戦争もまた然り。「戦争ができる」ことと「戦争する」こととはまったく異なる概念だ。ある意味で「戦争ができる」という手段によって「戦争しない」「戦争を仕掛けられない」という「平和」目的を達成する。逆説的ではあるけれど。

連載:立花聡の「世界ビジネス見聞録」

  
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