2024年11月22日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2019年5月26日

単なる「先延ばし」

 ペンシルべニア州フィラデルフィアで5月18日に行われたバイデン氏の支持者集会に筆者が参加したとき、ウイスコンシン州シボイガンから車で13時間かけて集会に駆け付けたバイデン支持者と遭遇しました。この白人男性(26)は次のように述べました。

 「ウイスコンシン州の農家は中国に大豆やチーズ、豚肉を輸出しています。ところがトランプが中国製品に追加関税をかけたので、中国は米国製の農産物に報復関税をかけました。それが原因で、ウイスコンシン州には倒産した農家があります」

 トランプ大統領には大統領選挙の最重点州であるウイスコンシン州の農家を助けるために、同州の豚肉を日本に売りつける思惑があるのでしょう。

 安倍総理は、夏の参院選が終わるまでは自動車輸出の「数量規制」や農産物の関税引き下げの要求は待ってもらい、その代わりにトランプ大統領の選挙協力をするという「密約」をかわしたのでしょう。ただ、これは単なる「先延ばし」にすぎません。

 民主党候補からペンシルベニア州、ミシガン州及びウイスコンシン州の3州を狙われているトランプ大統領が、日本的な蜜月関係を捨て、ビジネスライクで安倍総理に迫るのは時間の問題です。

 トランプ大統領は中国の習近平国家主席に対して、「私は習のことが好きだ。彼も私のことを好きだと思う。米国の過去の大統領が中国との貿易問題を解決してこなかった」という議論の仕方をして、容赦なく対中貿易赤字是正に取り組んでいます。今後、安倍総理にも同様のアプローチをしてくる可能性は否定できません。

  
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