今回のテーマは、「トランプ訪日の狙いと日米首脳会談の隠された議題」です。ドナルド・トランプ米大統領は5月25日、大統領専用機(エアーフォースワン)で羽田空港に到着すると、早速米国大使公邸に向かい、日本企業のビジネスリーダーとの会合に臨みました。そこでトランプ大統領は、トヨタ、ソフトバンク、デンソーなどの日本企業の投資に謝意を述べ、さらなる投資を呼びかけました。
本稿では、トランプ訪日の本当の狙いと日米首脳会談の隠された議題について述べます。
支持者を意識するトランプ
トランプ大統領には来日中、日本企業のビジネスリーダーとの会合、安倍晋三総理とのゴルフ、大相撲夏場所の千秋楽観戦、炉端焼き店での夕食会、新天皇陛下との会見、日米首脳会談、北朝鮮による拉致被害者の家族との面会、宮中晩餐会及び海上自衛隊の護衛艦「かが」視察といった日程が組まれています。では、この中でトランプ大統領が最も重視しているイベントはどれでしょうか。
圧倒的に「新天皇陛下との会見」でしょう。というのは、トランプ大統領は支持者を集めた集会で、「自分が大統領になって、米国は世界から尊敬されるようになった」と繰り返し訴えているからです。「令和」初の海外国賓という「称号」を利用して、「尊敬を得た米国と自分」を支持者にアピールする絶好の機会です。
トランプ大統領は自身のツイッターに新天皇陛下との写真を投稿することは間違いありません。6月から再選に向けて本格的に選挙運動を開始します。そもそも歴史的なイベントに高い関心を持っている同大統領は、支持者を集めた集会で「新天皇陛下との会見」に言及し、世界が米国に対して尊敬の念を抱いていると主張するでしょう。
従って、日本で敬意を表されている米国と自分を支持者に示すことが、トランプ大統領の最大の思惑になります。
議会民主党へのメッセージ
「新天皇陛下との会見」を最重視する他の理由も挙げてみましょう。国内事情と関係があります。
ロシア疑惑捜査をまとめた「モラー報告書」が公開されました。一部は黒塗りですが、共和・民主両党の元連邦検事がトランプ大統領の司法妨害を認定し、署名運動を起こしています。加えて、議会民主党は下院司法委員会のジェロルド・ナドラー委員長(ニューヨーク州第10選挙区選出)を中心に、ロシア疑惑に関する議会捜査に時間とエネルギーを注ぎ、巻き返しを図っています。
トランプ大統領が司法妨害解明のカギを握るロバート・モラー特別検察官及びドン・マクガーン元大統領法律顧問の議会証言を阻止したので、議会民主党は同大統領がロシア疑惑の議会捜査を妨害し、隠蔽工作をしていると激しく批判しています。特に、民主党急進左派の間で「トランプ弾劾の手続き開始は回避できない」という声が高まっています。
このような状況で、トランプ大統領は新天皇陛下との会見を活用して、議会民主党に対して「世界から尊敬をされている米大統領をどうして弾劾するのか」というメッセージを発信する狙いもあります。
結局、新天皇陛下との会見にはトランプ大統領にとって、支持者と議会民主党へメッセージを発信できるというメリットが存在することは確かです。