2024年11月22日(金)

解体 ロシア外交

2011年12月21日

 そのような中、13日に今回の選挙で躍進した中道左派の野党「公正ロシア」(クレムリンが創設)党首・ミロノフ前上院議長が、大統領選への立候補を中央選挙管理委員会に届け出た。ミロノフ氏は、大統領選は少なくとも一度の投票では決まらず、決選投票になることは間違いないという見解を示している。

 このニュースはクレムリンにとって朗報として受け取られたという。下院選で統一ロシアの得票率が過半数に満たなかったことから、党首の首相も大統領選の第1回投票で当選に必要な過半数の得票が困難になったとの見方が出ていた。プーチンにとって本当に脅威なのは「公正ロシア」のドミトリエワと共産党のジュガーノフであり、「公正ロシア」がミロノフを立てたことで、プーチンが大統領選で3位の憂き目にあう可能性が減ったといわれているからだ。なお、今年9月にロシアのリベラル系政党「正義」の党首を解任されたロシアの長者番付3位の富豪・プロホロフ氏も12日に、大統領選挙への立候補を表明しているが、政治的影響力は少ないと見て良い。

デモは米国の策謀?

 そのような中、プーチン氏は事態を取り繕うために、大衆の抗議デモは米国務省の策謀だと主張し始めた。確かに、クリントン米国務長官は、選挙の施行方法について深刻な問題が懸念されるため、きちんとした調査を求めると12月5日に主張していたが、プーチン氏は、8日に国営テレビで、そのクリントンの発言こそが、米国務省の支援を受けている反政府勢力に対して行動を開始させる合図だったと述べ、外国からの干渉からロシアを守らねばならないとまで発言しているのである。

 当局は、選挙前から統一ロシアのやり方に批判的だった独立系の選挙監視団体「ゴラス」に強制捜査を行ったり、パソコンを押収したりしているが、「ゴラス」が欧米の支援を受けていることを特に批判しており、欧米勢力がロシアの反政府的運動を煽動しているというシナリオを確立することに躍起になっているのである。ゴラスが欧米からの資金提供を受けているのは事実だが、同様に欧米の資金援助を受けているというレッテルを貼られている野党やデモの組織者は、当局の主張を被害妄想だとして一笑に付している。ちなみに政治活動のために外国から資金供与を受けることは、ロシアでも違法である。

 確かに、2003年のグルジアのバラ革命や翌年のウクライナのオレンジ革命においては、米国の関与があったことは間違いない。しかし、その事実に乗じて米国にデモ発生の責任をなすりつけ、自己保身を図るプーチン氏にはかつてのカリスマ的指導者の貫録はもはやない。

メドベージェフの不正調査命令

 メドヴェージェフ大統領は、欧州安全保障協力機構(OECE)や米国からの不正選挙に対する調査を求める声と国民の反発を受けて、12月11日に自らのフェイスブック上で、不正が指摘されている全ての投票所での調査を実施するよう命じたのである。

 その中でメドヴェージェフ氏は、国民は自分の意見を表明する権利を持っており、それが法律の枠内で実現されたことは喜ばしいが、集会でのスローガンには賛同できないとも表明している。なお、メドヴェージェフ氏がフェイスブックを利用したことについては、デモ隊がインターネットのフェイスブック、ツイッター、ブログなどのSNSを主たる連絡手段としていることから、デモ隊への直接的アピールの意図があるとも考えられている。

 だが、このメドヴェージェフのアピールへの反応は、まさに彼の権威の失墜を証明するものとなった。メドヴェージェフの書き込みに対し、「メドヴェージェフって誰だ?」という書き込みが殺到したのだ。


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