2024年11月22日(金)

解体 ロシア外交

2011年12月21日

 それでもメドヴェージェフ氏は、13日に野党や国民の反発に理解を示す発言をし、21日に下院を初召集することも発表した。その際、大統領は、下院選挙で野党が議席を増やしたことで、今後、下院の重要な委員の多くは野党が支配することになるという見解も述べたが、実は、ロシアでは行政における大統領の権限が強いため、国政には大きな影響は出ない模様だ。

 そして、この場に及んでもなお、首相サイドは不正を過小評価する発言をし、顰蹙(ひんしゅく)を買っている。12日に、プーチン氏の報道官のペスコフ氏が、不正投票はあったとしても全投票の0.5%程度であり、仮に本件が裁判で争われることになっても、選挙の正統性は担保されるはずだと述べたのである。ちなみに、チャイカ検事総長は、一定の不正があったことを認めつつも、投票のやり直しや再集計を行うまでの根拠はないと述べている。

政権主導の集会でデモに対抗

 体制側も、政治集会によって対抗姿勢を見せた。12日に、「統一ロシア」が主モスクワ中心部クレムリン脇のマネージ広場で集会を主催し、首相を支持する青年組織「ナーシ(友軍)」や「若き親衛隊」など、約2万5000人が参加した。次期大統領選でプーチン首相を当選させることがロシアの安定的発展につながることなどが訴えられた。

 今回の選挙結果の責任を負わされたのが、グリズロフ下院議長だろう。彼は、2期8年間、下院議長職を務めていたが、14日に下院議員の当選を辞退することを明らかにした。彼は「下院議長を2期以上務めても違法ではないが、正しくない」と述べている。しかし、それならば最初から立候補しなければいいだけの話であり、引責辞任と見られている。当初、下院選挙の結果が良くなかった場合、メドヴェージェフ大統領の首相へのスライドが取り消されるなどの引責行為も想定されていたが、それは今のところ、実現していない(ただし、今後の状況次第で、そのようなシナリオも実現しうる)。

ついに飼い犬たちも反旗を……

 ここにきて、ついにプーチンの飼い犬たちもが反旗を翻すようになっている。プーチン首相の腹心の一人であるクドリン前財務相、聖職者、メディア、中間層である。

 クドリン氏は、ポスト交代を発表したメドヴェージェフ氏に反旗を翻して辞任に追い込まれていたが、プーチンの腹心であったため、実はそれもポーズで、下院選挙の結果、メドヴェージェフ氏が引責辞任に追い込まれ、クドリン氏が首相になるのが本命なのではないかということすら囁かれていた人物である(拙稿「プーチン政権再来とその対外政策の展望」)。彼は、選挙後に、野党によるチューロフ中央選挙管理委員会委員長の辞任要求を「正当だ」と支持する一方、政権に近いリベラル派や企業家を結集する新党創設の必要性に言及し、自身も参加する用意があると述べた。それは、現在の下院から排除されているリベラル派を取り込んでプーチン氏中心の政権を支える狙いがあると見られていたが、そうとも言えなさそうだ。

 15日になると、今回の選挙は不正であったと批判したうえで、しかるべき人がきちんと責任を負うべきだと主張すると共に、プーチン氏の抗議行動に対するコメントを「間違った姿勢だ」と批判し、現実の諸問題に新しいアプローチをとるべきだとも主張した。プーチン氏をも批判したのである。なお、上述の富豪プロホロフ氏も、クドリン氏との連帯を希望しているという。


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