中東を読み解く

2019年6月25日

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秘密作戦を強化

 こうした中、トランプ大統領は24日、イランの最高指導者ハメネイ師を新たに制裁対象に追加したと発表した。制裁対象には米軍の無人機撃墜を命令した司令官らイランの軍司令官8人も含まれている。制裁はハメネイ師らを国際的な金融システムから締め出す内容だが、同師らが外国に資産を持っている可能性は小さく、象徴的な意味しか持っていない。

 大統領はまた、軍事的な選択肢を排除しない姿勢を示し、核兵器製造を求めることをやめ、中東各地でテロ支援を停止するよう要求した。しかし、一方で、「前提条件なしにイランと話し合う用意がある」とも述べ、交渉に前向きな姿勢を示した。イラン高官は「制裁を発動しておいて、話し合いたいというのは受け入れられない」と反発している。

 だが、トランプ大統領は当面、イラン側がタンカー攻撃や米軍に対する攻撃など挑発行動に出ない限り、イランへの直接的な軍事攻撃を回避し、制裁とサイバー攻撃などの秘密作戦でイランの締め付けをさらに強めるという戦略に転換したようだ。その最大の理由は戦争になれば、大統領の再選戦略に大きな支障が出かねないということだ。

 検討されている秘密作戦はサイバー攻撃、革命防衛隊の高速艇の破壊工作、国内の反政府運動の扇動、ヒズボラなどイラン代理人幹部殺害への報奨金支払いなど多岐にわたっている。サイバー攻撃はすでに20日夜、米サイバー軍が無人機撃墜の報復として発動した。イランのロケットやミサイルなどのコンピューターシステムにウイルスを発射したという。

 オバマ前政権はイランの核開発を阻止するため、イスラエルと共同で「スタックスネット」というウイルスをイランの遠心分離機を制御するコンピューターシステムに埋め込み、開発を遅らせたことがある。対イラン強硬派のボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が数日前に急きょ、イスラエルを訪問してネタニヤフ首相と会談したのも、サイバー攻撃の協力要請だった可能性がある。

 しかし、イランのサイバー部隊は2012年ごろから、米金融機関やラスベガスのカジノのコンピューターシステムに侵入したり、サウジアラビアの国営石油公社アラムコのシステムのバックアップを削除したりするなど、サイバー攻撃を仕掛けた実績がある。米国土安全保障省は米企業にサイバー攻撃の危険性があると警告し、イランへの警戒を呼び掛けている。

  
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