2024年11月22日(金)

中東を読み解く

2019年6月25日

 ペルシャ湾で米国とイランの軍事的緊張が続く中、米国が策定中のホルムズ海峡防衛構想「センチネル作戦(見張り作戦)」の概要が明らかになった。トランプ大統領は6月24日、同湾岸からの石油の恩恵に浴している国は「自国の船舶を自分で守るべきだ」とツイート、大阪で来週開催される20カ国・地域(G20)サミットの機会に日本側に応分の負担を要求する見通しとなった。

(Stocktrek Images/gettyimages)

米国はペルシャ湾にいる必要がない

 トランプ大統領はツイッターで、「中国は91%、日本は62%、その他の国の多くも(ペルシャ湾の石油)に依存してきた」と指摘し、「なぜわれわれは何年もこれらの国のために無償でシーレーンを守っているのだろうか。危険な船舶の航行は自分の手で守るべきだ」と述べた。

 大統領はこれまでも、日本や欧州に対し、防衛ただ乗りを容認しないとの姿勢を繰り返してきたが、ホルムズ海峡の安全についても、当該国がその責任を果たすべきだとの考えを示したものだろう。大統領はさらに「米国はペルシャ湾にいる必要はない。なぜならわれわれは世界最大のエネルギー生産国だからだ」とシェール石油の開発促進によって、もはやペルシャ湾にエネルギーを依存する必要がなくなったことを強調した。

 大統領は27日からの大阪G20サミットに出席する予定で、安倍首相に直接、「センチネル作戦」への参加を求める考えと見られている。米メディアによると、同構想はペルシャ湾岸の石油の生産国と購入国による有志連合が世界屈指のシーレーンであるホルムズ海峡の安全航行を守るため、応分の負担をするというのが骨子だ。ポンペオ国務長官がすでに24日、サウジアラビアとアラブ首長国連邦を訪問し、米主導の構想への参加を取り付けた。

 米国の腹積もりとしては、ペルシャ湾岸の生産国側からサウジなど湾岸協力会議の6カ国やイラク、購入国側から日本やインドなどのアジアの購入・消費国を見込んでおり、参加国は合計20カ国を超えると想定している。中国は米国との貿易戦争の真っただ中にあり、トランプ政権が参加を要求しても、これに応じるかどうかは微妙だろう。29日に予定されている米中首脳会談の議題にはなると見られている。

 作戦は具体的には、「財政支援」「監視」「護衛」の3つが柱。「財政支援」は防衛費用の拠出、「監視」はタンカーなど船舶へのカメラや監視機器の設置の他、航空機による哨戒任務も含まれる。「護衛」は商業船の防衛任務だ。日本が懸念しているのはトランプ大統領が海上自衛隊艦船の出動を要求しかねない点で、安倍政権が難しい対応を迫られるのは必至。

 ポンペオ国務長官は訪問先のUAEで「航行の自由は極めて重要だ。トランプ大統領はこの費用を米国だけで負担しないと言っている」と述べ、ペルシャ湾の石油の売買国に公平分担を要求した。イランのザリフ外相はトランプ大統領が、米国がペルシャ湾にいる必要がないとの考えを示したことを皮肉り「トランプは100%正しい。米軍がいなくなることは米国と世界の利益にかなう」とツイートした。


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