2024年7月22日(月)

足立倫行のプレミアムエッセイ

2019年6月28日

最大のリスクは習近平

『習近平闘争秘史』

 15年に私が『ウェッジ』で取材した朝日新聞の元北京特派員、峯村健司さんは『宿命 習近平闘争秘史』(文春文庫)でこう述べる。

 「中国共産党にとって最大のリスクは“強大になり過ぎた習近平”」

 江沢民の院政排除のため前任の胡錦濤と手を組んだ習は、反腐敗キャンペーンで国民の支持を得ると同時に政敵らを片っ端から潰し、権力を一身に集めることができた。

 だが、有力なライバルや後継者候補さえ切ったということは、習が国政を失敗した場合、批判の矛先が自分一人に向くということだ。

 大きな懸念は、貧富の格差の放置である。

 最近の中国は、上位1%の富裕層が全国の3分の1の財産を保有するとされてきた。習政権を支える国有企業の特別待遇は変わらず、地方政府の乱開発も野放しのまま。置き去りにされた中・下層民の不満は増していた。

 そこへ昨年来の米中貿易摩擦である。

 数年前から人件費の高騰などで中国の製造業の収益は悪化していたが、アメリカの度重なる制裁で工場の海外移転が加速したのだ。 

 工場閉鎖、株価下落、大量失業、物価高、環境汚染……。プラス香港の民主化要求デモ。これら難問を、周囲をイエスマンに囲まれた習近平は間違うことなくさばけるのか?

 「習がこれに失敗し、国民の不満が臨界点に達すれば、共産党の危機に発展しかねない。私は“ポスト習”の時代は白か黒かの二者択一しかないと考えている。共産党が新たに生まれ変わり順調な政権運営をするのか、正統性を失って混乱と滅亡の危機に瀕してしまうのか、だ」

 中国ウォッチャーの峯村さんはそう展望する。

 そしてもう一人の中国ウォッチャー、安田さんは自署の中で次のように記す。

 「すくなくとも今後の数十年、習近平が権力を失って中国で内乱が起きる可能性はあっても、まともに民主化が実現する可能性はほぼゼロに近いだろう」

 さて、どうなるか?

 華為技術(ファーウェイ)のグローバル市場からの締め出しを皮切りに、アメリカは先端技術分野での中国との全面対決に踏み切った。米中の経済・戦略戦争は長引きそうだ。

 天安門事件から30年。日本は隣の超大国の重要な変化を最大限注視すべき時である。

  
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