2024年11月22日(金)

オモロイ社長、オモロイ会社

2019年7月12日

いきなり10億円の銀行借り入れ

 心臓外科医として命に向かうこと、それも目の前で命の火が消えていくことを何度も経験してきて、医師になりたての頃はさすがに足が震えたそうです。

 企業経営と人の命に向き合うことは単純に比較できることではないですが、双方に必要な「胆力」を身につけるという意味では、心臓外科医としての経験は大きいと、伊藤さんは言います。

 起業してすぐに10億円の調達をすることになったそうなのですが、「リスクとベネフィット」をキチンと判断すれば事業は成功すると当初から考えていたそうです。

 その最初に起こした事業は二つでした。「クリニック」と「老人ホーム」です。

 伊藤さんが医者として活躍していた茨城県は日本で2番目に人口あたりの医者数が少なく、1番は埼玉県、3番目は千葉県となっています。伊藤さんの出身の新潟県は5番目と医療過疎とも言える現状があります。

 また50年前の日本では90%が自宅で死を迎えていましたが、現在では10%程度となっています。その一方で、現代人の60%は自宅で死を迎えたいという希望を持っているのです。

 そこで余命期間の少ない、ガン、難病等の重篤患者や後遺症に苦しみ、ハンディキャップがあっても、自分らしく生きることが選択できる在宅医療や、終の棲家を、主に高齢者向けに提供するために、メドアグリケアグループを立ち上げました。

 現状、クリニック(5カ所:茨城県つくばみらい市、かすみがうら市、茨城町、千葉県成田市、新潟県糸魚川市)と、住宅型有料老人ホーム(1カ所:つくばみらい市、今年の12月にかすみがうら市にも開設予定)を経営しています。

 こちらでは、訪問診療・訪問看護・入院診療、デイケア、住宅型有料老人ホームを総合的に運営しています。「やさしい心をもち、いつまでも寄り添い支えます」という理念と約束を、カタチに、地域に根ざした活動をわずか数年で具現化しています。

 一般的である「病院と老人ホームのピストン」にならない、体調を崩しても老人ホームに住み続けられる体制となっていることも特徴だそうです。

日本一の「サイバーホスピタル事業」を目指し、立ち上げへ

 高齢者向けの課題に向き合っていく中で次に見えてきたのが、子供や忙しい会社員。病院に行って、長時間待たされたあげくに、3分診療。さらに薬の受け取りにも長蛇の列。

 在宅医療において、病院の外での治療に手応えをもちはじめたこともあり、自宅や会社に居ながらにして医師に相談ができればワザワザ病院に来なくても良い、「サイバーホスピタル事業」の構想を持ち始めるようになっていったそうです。

 スマートフォンを活用することで、サイバーの世界で専門的な医師に気軽に相談できること。健康保険を使用せずに、市販薬購入を促し、セルフメディケーションを推進し、国の医療改革の一助になるようなサービス。

 その実現へ踏み出すことを決意しつつ、

 「元々医者家系の育ちでないこともあり、医者のことを「先生、先生」と呼ぶことに違和感もありました、患者も医師を評価する、医師、患者双方が評価し合うことが当り前となる仕組みを創りたいと考えるようになりました」

 と、伊藤さんは話します。


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