半導体原料の規制で反発
今回の〝告げ口〟のきっかけとなった輸出規制問題については、すでにくわしく報じられている。
7月5日に日本政府が発動した対韓輸出規制は、半導体やディスプレーの原材料となるレジスト(感光材)、エッチングガス(フッ化水素)など3品目が対象。輸出の際、これまでの優遇措置、「包括許可」が取り消され、今後は個別契約ごとに日本政府の許可をとることが必要になった。
この措置は当初、韓国人元徴用工の訴訟をめぐる韓国側対応への対抗措置とみられていた。また半導体は韓国の輸出の2割を占める主力産業であり、それだけに韓国側の激しい反発は当初から予想されていた。日本政府は、「不適切な事案が発生した」として、安全保障を損なう問題があったことを示唆していたが、その内容について説明を避けていた。
生物・化学兵器原料輸出で摘発142件
その内容を明らかにしたのが、7月11日の各紙の記事だった。いち早く報じた産経新聞は、韓国産業通商資源省の「戦略物資無許可輸出摘発現況」に基づき、2016年1月から19年3月まで間に、142件が処分対象になったと伝えた。サリン原料の「フッ化ナトリウム」がイランに、生物兵器製造に転用可能な「生物安全キャビネット」がシリアに、化学兵器原料となる「ジイソプロピルアミン」がパキスタンにそれぞれ不正輸出されたという。
関与した企業名、それら各社が刑事訴追されたのか明らかにされていない。流出した物資が北朝鮮の手に渡ったのか、という最大の懸念ついてもに不明だが、今回の日本による輸出規制強化は、徴用工訴訟での単なるしっぺ返しなどではなかったことになる。
日本国内でも、経済界を中心に、輸出規制が関連企業に悪影響を与えるという懸念、世界貿易機関(WTO)に提訴された場合、日本が不利になるのではないかとの危惧もあったものの、それらは勢いを失っていく可能性がある。