Washington Files

2019年8月5日

»著者プロフィール
著者
閉じる

斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

米側の主張の矛盾を露呈させる結果

 第三に、各国が反イラン包囲網形成に賛同した場合、イラン核合意からの公式離脱の口実をイラン側に与え、本格核開発を逆に加速させてしまうことになるからだ。そうなると合意以前のイランの核の脅威を中東全体に拡大させることが懸念される。

 トランプ政権は自ら合意離脱に踏み切った理由として、「合意は不完全であり、イランのすべての脅威が除去されなければならない」(ポンペオ国務長官)としてきたが、これでは
逆に脅威をさらに増大させ、米側の主張の矛盾を露呈させる結果となる。

 第四に、前回の本欄でも述べたが、トランプ政権下の対イラン政策が首尾一貫性を欠いていることがある。

 たとえば、去る6月、トランプ大統領は、イラン革命防衛隊による米軍無人機撃墜の報復措置としていったん決断した対イラン限定爆撃を「不相応な人的被害が出る」ことを理由に直前で中止したが、その直後のエピソードが典型だ。

 同月23日、大統領は米NBCテレビとのインタビューで「イランとの戦争を望んでおらず、イランとは前提条件抜きで話し合う用意がある」と語った。ところが、ボルトン大統領補佐官は同じ日に、訪問先のエルサレムで報道陣に対し「イランは大統領の慎重さをアメリカの弱みと勘違いしてはならない。われわれの(対イラン)最大圧力作戦は揺るぎない」と強気の発言を繰り返した。

 この点の立場の食い違いについて聞かれた大統領はさらに「ボルトンは絶対的なタカ派だ。彼の言う通りにやっていたら、世界全体を相手にしなければならなくだろう。自分は様々な人の意見を聞くことにしている」と答えている。

 関係諸国にしてみれば、政権内での混乱や見解の不一致が度重なり、「有志連合」結成呼びかけについても、米政府がどこまで本気の構えなのか、疑心暗鬼の状態に置かれていることも事実だ。 

関連記事

新着記事

»もっと見る