米軍がとくに神経をとがらせる中国の「DF-21」
その中国だが、米国防総省が発行する2013年度版『中国の軍事力』によると、1980年代後半から、従来のソ連モデルに代わる中国初の“国産”中距離弾道ミサイル「DF-3」(射程3300キロ)の開発実験を成功させ、米領グアムを射程に入れる能力を保有するに至った。その後、「DF-4」、「DF-5」「DF-11」「DF-12」と世代交代による急ピッチの改良が進み、今日では「DF-21」配備にまでこぎつけている。
米軍がとくに神経をとがらせるのが、この「DF-21」だ。「全米航空宇宙インテリジェンス・センター」(National Air and Space Intelligence Center)の分析によると、陸上配備の移動式ランチャーから太平洋を航行する米軍空母機動部隊を攻撃可能な「世界初の対艦弾道ミサイル(ASBM)」として注目されており、最大射程1450キロ前後と推定されている。
さらに中国は、地上目標を攻撃するIRBM「DF-26C」(射程3500キロ)を開発、グアム米軍基地をも射程に入れた。
ハリー・ハリス米太平洋軍司令官は2017年当時、米議会証言で、中国がこれらの弾道ミサイル及び巡航ミサイル含めすでに約2000基を保有していることを明らかにした上で「もし、中国がINF条約に参加していれば、そのうちの95%が条約違反対象になったはずだ」と語っている。
米国はこうした中国の動きに対抗するため、INF条約により撤廃した従来型の「パーシングⅡ」や海上、空中発射巡航ミサイルに代わる新型中距離ミサイルの開発に乗り出してきた。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、米軍が最初に発射テストを予定しているのが、海上発射巡航ミサイル(SLCM)として知られた「トマホーク」の改良型で、早ければ「今月中」にも実施されるという。INF条約では陸上発射巡航ミサイル(GLCM)保有は禁じられていたため、これまで米軍はSLCMのみを太平洋軍配属の艦船に配備してきた。しかし、同条約失効にともない、急遽、GLCMへの改良に着手し始めている。
米軍はこれに続いて、年内をめどに、射程2880キロ~4000キロの新型地上発射中距離弾道ミサイルの実験を行いたい意向だ。同型ミサイルは移動式で標的になりにくく、中国の「DFシリーズ」中距離弾道ミサイルに対応したものだ。