中国側は冷淡な反応
一方、 トランプ政権はこれまでの米露2国間に代わり、中国を加えた3国間の新たな核軍縮交渉に乗り出したい意向だが、中国側は冷淡な反応しか見せていない。
中国の立場からすれば、自国が保有する中距離ミサイルは米本土を直接射程に入れたものではなく、あくまで日韓両国の米軍、および北太平洋に展開する太平洋軍に対峙したものだからだ。これに対し、米軍が新規導入することになる中距離ミサイルは「通常型」とはいえ、グアム島あるいは日本、韓国に配備した場合、中国東南部を標的にすることになるだけに、この状態のまま、相互軍縮に合意することになれば、米側が優位になるとの判断だ。
いずれにしても今後、日本としては、自国の安全を確保するために防衛政策見直しを迫られることになる。なぜなら、今世紀に入って以来のミサイル防衛体制は主として北朝鮮の核ミサイルを念頭に置いてきたからに他ならない。近い将来に向けて、中国およびロシアの中距離核にもどう対処していくのか、大きな課題を突き付けられることになる。
中距離ミサイルの今後の軍拡のみならず、射程5000キロ以上の戦略核についても、
懸念が広がり始めている。米露間のSTART(戦略兵器削減条約)の期限切れが2021年2月に迫っているからだ。
トランプ大統領は、同条約が期限切れとなった後、更新するかどうかについては現段階では明言していないが、すでに政権内部には更新に反対する動きが出始めている。その理由として、ロシア側がその後、戦略兵器の近代化に着々と取り組んでいることに加え、制限対象外の中国もINFのみならず、戦略核戦力を増強しつつあることが指摘されている。
20世紀の核戦略は米ソ2国間に焦点を当てて進められてきた。しかし、21世紀はこれに中国を加えた3国間を中心にし烈な攻防が展開されていくことになる。
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