「分析の仕方は各球団によって三者三様だろうが、我々の球団は現段階で奥川君のほうが佐々木君よりも総合力では上と考えている。実は当初、我々は佐々木君のランク付けを奥川君よりも上にしていた。だが今や、それも完全に覆った格好だ。
その理由は簡単に言えば、この夏の甲子園という大舞台で奥川君が彼自身の引き出しの奥深さを見せつけてくれたから。何よりも佐々木君は甲子園に来ておらず、重圧のかかる中で強敵相手にどれだけのピッチングを見せられるのかは未知数。
それに比べ、奥川君はプロにおいて成長曲線を描く上で大きなパーセンテージを誇るハートの強さも持ち合わせていることを甲子園のマウンドでしっかりと証明している。プロに入ってからは佐々木君よりも即戦力という面においてはるかに計算の立つ投手だ。おそらく我々のように今回の甲子園のマウンドを見て、今秋のドラフト1位指名の方針を佐々木君から奥川君への変更を検討し始める球団も数多く出てくるのではないか。そういう情報もネット裏では実際に飛び交っている」
今秋ドラフト会議での1位指名候補選手として佐々木はプロ各球団の一番人気と目されている。だが甲子園出場をかけた岩手県大会決勝で登板回避となり、チームも敗れて夢舞台に立つことはないままドラフト指名を待つことになった。
今月下旬から韓国で開かれるU―18W杯への出場する侍ジャパン候補メンバーに選出こそされているものの、甲子園の激闘で短期間ながらさらなる成長を遂げている奥川に〝差〟を付けられつつあるのは明白だ。そう考察すると確かに今秋のドラフト1位指名を佐々木から奥川に〝鞍替え〟する球団が多数出てきたとしても何ら不思議はない。
トリプルAからスペシャルAに
一方、奥川をマークしているのは何もNPBの国内球団だけではない。今大会、夏の甲子園ではメジャーリーグの極東担当スカウトたちもネット裏で奥川に照準を合わせながら熱心な情報収集に励んでいる。
「奥川が甲子園のビッグトーナメントで佐々木に匹敵、いや彼以上のポテンシャルを発揮していることで評価ポイントが『AAA(トリプルA)』を上回る『スペシャルA』にまで上がっているメジャー球団もある。常識的に考えて奥川はNPBに行くことになるだろうが、米移籍に理解がある球団に入ってから、さらに成長を遂げ、極力早急にポスティングシステムを使ってメジャー移籍を果たしてほしいというのが、こちら側の本音だ」(ア・リーグ東地区の球団スカウト)
いざ、フタを開けてみると今秋ドラフト会議で一番人気のセパ各12球団争奪戦となるのは佐々木ではなく奥川となりそうな気配が漂う。
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