2024年12月9日(月)

Wedge REPORT

2019年7月29日

(USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 またしても批判の嵐にさらされている。野球評論家の張本勲氏が28日放送のTBS系情報番組「サンデーモーニング」に出演。大船渡(岩手)の163キロ右腕・佐々木朗希投手が夏の甲子園出場をかけた県大会決勝で登板を回避して花巻東に敗れたことに対し、次のように舌鋒を向けたからだ。

 「最近のスポーツ界でね、私はこれが一番残念だったと思いますね。32歳の監督(大船渡・国保陽平監督)でね、若いから一番苦労したと思いますがね、絶対、投げさすべきなんですよ。前の日にね、129(球)投げてますからね。大体、(準決勝までの)予選で4回しか投げてないんですよ。合計で430、450(球)くらいしか投げてないのよ。昨年、吉田輝星(金足農)が800(球)くらい投げているんですよ、1人で」

 こう言って顔をしかめると、さらにこうも続けた。

 「監督と佐々木君のチームじゃないんだから。ナインはどうしますか? 一緒に戦っているナインは。1年生から3年生まで必死に練習してね。やっぱり甲子園は夢なんですよ。私は夢が欲しくてね、小雨の路地で泣いたことがありますよ。2年生、1年生も見てるんだから」

 一度火が付いてしまった張本節はおさまることもなく「最後に言いたいのは先発させてナインに『早く点を取ってやれよ、3点でも5点でも』と。そしたら代えてやることもできるんだから。先発させなかったのは間違いだったと思いますよ」と断じるまでに至った。

 〝口撃〟の対象となった国保監督についても「彼はアメリカの独立リーグにいたんですよ。アメリカ流に考えているんですよ。アメリカは(投手の肩肘は)消耗品だと思っているから。日本は投げて投げて力を付ける。考え方が全然違うんですよ」と決めつけるように一方的なコメント。

 日本高校野球の指導者として米独立リーグ経験者の国保監督は不適格であることを匂わせるような発言までぶっ放してしまったから、ネット上は多くのユーザーたちの怒りや猛反論で大炎上した。

 しかも番組内での張本氏の極めつけは、こんな〝言い分〟だった。

 「ケガが怖かったら、スポーツは辞めたほうがいい。将来を考えたら投げさせた方がいいんですよ。苦しい時の投球をね、体で覚えて大成した投手はいくらでもいる。楽させちゃダメですよ、スポーツ選手は」

 個人的な感想で大変恐縮だが、長く野球の取材を重ねている立場の人間として普通に番組を見ているだけでとても気分が悪くなった。物事を冷静な考えで見聞きできる人ならば、番組内における張本氏の発言の数々には突っ込みどころか数多くあったことに気付いたと思う。

 たとえば「日本は投げて投げて力を付ける」と言い切っているが、ひと昔前の昭和の時代ならばまだしも現代野球のセオリーにおいて、このような根性理論は日本においても絶対的ではない。

 「ケガが怖かったら、スポーツは辞めたほうがいい」
 「将来を考えたら投げさせた方がいい」
 「楽させちゃダメ」

 などといったコメントにも首をかしげたくなる。決勝当日の佐々木のコンディションを詳細に把握していたわけでもないのに、よくぞここまで自信を持ちながら上から目線でモノを言えるなと呆れてしまう。

 誰よりも教え子を一番傍で見ている国保監督が自ら下した判断について、佐々木のことなどロクに知りもしないはずの張本氏から四の五の言われていることを聞けば、さすがに感情を押し殺しながらも内心では怒りを募らせるであろう。

 逆に国保監督が甲子園行きだけを追求するがあまりに佐々木の決勝登板を強行させ、選手生命を大きく左右してしまうような重大な致命傷を負わせてしまったとしたら一体どうするつもりなのだろうか。それでも張本氏が決勝登板回避の時と同じ姿勢を貫けるとは到底思えず、今度は「なぜ無理に投げさせたのか」と言いそうな気がしてならない。

 腹立たしさと不可解さのあまり、つい〝怒りのペン〟を走らせてしまったことをお許しいただきたい。ただ多少の差異はあれども、ほぼ同意見である人はそれなりに世の中で数多いと確信している。


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