日本ラグビー界にとっては大きなマイナスだ。トップリーグのトヨタ自動車ヴェルブリッツのFBイエーツ・スティーブン容疑者がコカインを所持していたとして27日、愛知県警に麻薬取締法違反の容疑で逮捕された。
チームからはSO樺島亮太容疑者に次ぐ同容疑で2人目の逮捕者となっただけに、関係者の衝撃はとてつもなく大きい。すでに2人の所属するヴェルブリッツは22日に開幕したばかりのトップリーグ2019への参加を急遽辞退し、活動自体を当面見合わせるとしている。この問題はまだ広がりそうな気配も漂っており、当面の間は沈静化しそうもない。
イエーツ容疑者は樺島容疑者に対する捜査の過程で浮上したという。愛知県警はコカインの入手経路を入念に調べており、日本ラグビー界を震撼させているコカイン騒動の全貌が徐々に明らかになっていくはずだ。
ただ、今後の捜査においては名門チームを廃部危機に追い込みかねない〝決定打〟が出てくる可能性も残念ながら否定しきれない。「第3の逮捕者」だ。ヴェルブリッツのチームスタッフは不安げな表情を浮かべ、こう話す。
「現段階で2人はコカインの所持容疑だが、使用の容疑が固められればヴェルブリッツのチームメンバー全員も有無を言わさず捜査対象になってしまうと聞いている。芋づる式で万が一、チーム内から3人目の逮捕者が出てくるなんてことになれば、その時点でチームの存続はもうアウトだろう。そんなことはないと信じたいが…」
いや、このまま逮捕者が樺島、イエーツ両容疑者の2人で終わればいいという問題ではない。今の段階でも当然のようにヴェルブリッツは計り知れないほどのイメージダウンを強いられている。2人も逮捕者が出たことでヴェルブリッツはチーム内に薬物が蔓延していると思われても仕方がないからだ。
トヨタ自動車の業績にも悪影響を及ぼす危険性もあるだろう。コンプライアンス遵守に目を光らせる上場企業としても株主対策として、このような不祥事が起これば厳しい対応を迫られるのも必然の流れだ。これらの観点を踏まえた上で、実際にトヨタ自動車の周辺からは「前代未聞の薬物逮捕者が所属選手から2人も出てしまったことでヴェルブリッツは休部もしくは廃部に追い込まれてしまうのではないか」と不安視する声も飛び交い始めている。
宮崎市内で合宿中の日本代表にはヴェルブリッツの主将を務めるNO・8姫野和樹がメンバーとして選出されている。9月20日からはW杯日本大会もいよいよ開幕するだけにカウントダウンが進んでいる中での不祥事発覚は、余りにもタイミングが悪い。
事件によって世間に「ラグビー=薬物」という悪いイメージが植えつけられ、W杯日本大会とラグビー日本代表の盛り上がりに水を差すことになってしまうとしたら極めて残念だ。
このコカイン騒動だけではない。日本ラグビー界は悲願と言い切れるW杯日本大会開幕が近づいているにもかかわらず、なぜか景気のいい話がほとんど聞こえて来ないのだ。