夢を叶えた。今年の米プロバスケットボールリーグNBAドラフト会議で八村塁選手が、あの「神様」マイケル・ジョーダン氏もかつて在籍したワシントン・ウィザーズから1巡目全体9位指名を受けた。日本人として初めてとなるNBAドラフト1巡目指名は想像を絶する快挙と言っても過言ではない。
全30チームでされる構成されるNBAのドラフトは1989年から2巡目までとなり、指名は60選手に限られる。同じく米四大スポーツのメジャーリーグ(MLB)では今年のドラフトで1217選手が指名された。それと比較すればNBAドラフトが狭き門であるかが分かる。しかも八村は1巡目だ。
現地時間の6月20日に行われたNBAドラフトの会場では上位指名が予想される選手だけが陣取る「グリーンルーム」に座り、吉報を待った。指名された瞬間、会場から大きな歓声が上がると八村は天を指差すポーズを決め、壇上で流暢な英語を駆使しながら堂々のスピーチ。早くもスーパースターの片鱗を見せつけた。
ここまでの経歴でも文句のつけようはない。全米大学体育協会(NCAA)1部の名門ゴンザガ大でジュニア(3年)に進んだ昨季からエースとなり、全米大学選手権(NCAAトーナメント)8強入りに貢献。
日本代表としても驚異的な活躍でチームを13年ぶりのワールドカップ(W杯)出場へと導いている。昨年のW杯アジア地区1次予選で開幕4連敗を喫した代表チームに緊急召集されると、当時の世界ランキング10位・オーストラリア戦で24得点を挙げてチームに歴史的勝利をもたらし、息を吹き返させたのは記憶に新しい。
今年3月に日本代表は2020年東京五輪出場も決めた。日本代表にとって44年ぶりとなる五輪出場の道筋を作ったのは間違いなく、この21歳の若き日本人である。
その日本人の彼が今、こうして平均年俸7億円といわれるNBAの世界へ入る「アメリカンドリーム」を成し得たのだ。NBAでは過去にドラフト1巡目指名のルーキーが1年目から年俸700万ドルを超えた例もレアケースではなく、八村にもその期待値は高まるばかりである。
ウィザーズには前記したジョーダン氏だけでなく、今もスター選手が在籍している。これまでオールスターゲームに5度選出された経歴を誇る人気選手のジョン・ウォールはその筆頭だ。司令塔PGとしてチームの中心的存在だが、現在は手術を受けた左かかと部分のリハビリと別部位の故障が重なって長期離脱中。
昨季キャリア・ハイの働きを見せた看板選手で生え抜きSGのブラッドリー・ビールも在籍しているが、チーム若返りを図るためロサンゼルス・レイカーズへトレード放出されるのではないかとのウワサも飛び交う。
来季のウィザーズは2人のスター選手の動向もしくは去就が不透明になっていることもあり、即戦力と目されるスター候補の八村をルーキーシーズンからNBAデビューさせて抜擢し、チームに新風を吹き込む存在として白羽の矢を立てる可能性がかなり高いとみられる。
実際に米スポーツ専門局「ESPN」など複数の現地有力メディアも、八村がルーキーシーズンからウィザーズで即戦力として相応の活躍を残すと予想しているほどだ。
これに付随して言えば、八村のストロングポイントは名門のゴンザガ大でエースとなった身体能力の面だけではない。自らの努力によって、その才能を突き破るほどに開花させていった流れもNBA関係者からの評価につながった重要なところだ。