ウィザーズではないが、ドラフトの前に八村の評価ポイントについて同じイースタン・カンファレンスのチーム関係者が次のように筆者に解説してくれたことがあった。
「彼はもともと大学に入った直後は即戦力と見なされておらず、将来性重視のレッドシャツ(登録外選手)となる方向性だった。しかしながら、それに満足せず1年目から『試合に出て結果を残す』ことに重点を置き、人並みはずれた練習量でプレーの質を上げ、さらにその類まれなコミュニケーション能力で入学時にはいまひとつだった英語のスキルも急速にアップさせ、周囲の信頼をつかみ取った。控え選手から2年目にはチームの最強シックスマンにまでのし上がり、3年目の今はスターティングファイブに入ったどころかチームのエースに君臨している。他の誰よりも非常に速いペースでアジャスト(順応)する能力を秘めていると思う」
ゴンザガ大のマーク・ヒューHC(ヘッドコーチ)が八村について「ルイはここに来たとき、子猫だったが今はタイガーだ」と語ったことも、うなずける。これだけ、NBA関係者からも絶大な評価を受けている八村はやはり本物だろう。
常に謙虚な姿勢をキープできる日本人の精神を有している
ちなみに、この前出のチーム関係者は八村が西アフリカのベナン出身の父と日本人の母の血を継ぐハーフである出生にも触れ、最後にこうも言い放っていた。
「日本ではルイ・ハチムラのことを一部の心ない人たちがネット上などで『純粋な日本人ではないから』などと言い合っていると聞いた。クレイジーな指摘だ。このような恥ずべき話を聞くと、残念ながら日本は排他的な考えを持つ人が多いと感じざるを得ない。彼の中であらゆる環境にアジャストする能力が高いのは、常に謙虚な姿勢をキープできる日本人の精神を有していることも大きいと思う。我々の観点から見れば、彼ほど日本人らしい日本人はいない。生まれも育ちも日本で日本国籍を持つ彼が最高峰のNBAからドラフトで歓迎されながら迎え入れられることを、日本人の人たちは誇りに思うべきだ」
確かに、そうだ。ヒーローになった八村についてネット上で「ハーフだから」とねじ曲がった指摘をしている人たちは相手にしないほうが懸命のようだ。NBAの歴史に名を残した日本人初のドラフト指名プレーヤー・八村の飛躍に注目したい。
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