報復誓うヒズボラ
今後はとりわけヒズボラの動きが焦点だ。強硬なアジテイターとしても知られるヒズボラの指導者ナスララ師がベイルートのメディアセンターが攻撃を受けた25日夜、ベカー平原で演説、イスラエルによる攻撃だと非難するとともに、レバノンからイスラエルに報復すると警告したからだ。
同師は緊張する現状について、イスラエルによって作られた“新たな段階”と指摘、「レバノンとの国境に配備されているイスラエル軍に通告する。今夜からわれわれに備えて待っていろ」と恫喝した。イスラエル国民に対しても、ヒズボラが侵略を見過ごすほど寛容ではないなどと強調した。
ベイルートの情報筋によると、ヒズボラはイランの意を受けて、シリアの内戦でアサド政権支援のため、最盛期には2万人の戦闘員をシリアに送り込んだ。しかし、戦死者も数千人に上ったうえ、アサド政権が内戦の勝利を確定的にしたことなどから一部が撤収、シリア派遣部隊は現在、8000人程度にまで減っていると見られている。
だが、ヒズボラはシリア内戦の実戦で戦闘力を一段と高めたといわれており、イスラエルにとっては大きな脅威だ。シリアに拠点を築いたヒズボラはシリア、レバノン双方からイスラエルに攻撃を仕掛けることが可能になっており、戦争になれば、イスラエルは2正面作戦を強いられることになるだろう。
イスラエルがこうした対外的な攻撃に出ている一方で、パレスチナ自治区ガザからも先週末、3発のロケット弾がイスラエルに向け発射され、うち1発が高速道路近くに着弾、この報復としてイスラエル軍機がガザのイスラム過激派組織ハマスの拠点などを空爆した。
イスラエルでは9月17日にやり直し総選挙が実施される予定だが、選挙に向けて周辺国やハマスに対する攻撃が一段と激化する恐れがある。ネタニヤフ首相が敵対勢力から国家を防衛するという強硬姿勢を示すことで、選挙を有利に運ぼうとしかねないからだ。「そうした火遊びが大戦争を招くかもしれない」(ベイルート筋)。米国とイランが対決するペルシャ湾だけではなく、イスラエルを取り巻く状況も緊迫の度を強めてきた。
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