背中でチームのみんなを引っ張れるような存在に
清原とはまったく違う状況に置かれた村上については、来季以降の〝伸びしろ〟を懸念する声も多い。ほかならぬヤクルトのチーム関係者からも、こんな声が聞かれる。
「村上には近い将来、筒香(嘉智=DeNA)、鈴木(誠也=広島)のような堂々たる主砲に育ってほしい。背中でチームのみんなを引っ張れるような存在にね。しかし、自分の成績ばかりを追い求めたため、結局は一時期良かっただけで伸び悩んでいるスラッガーもたくさんいるでしょう。引き合いに出しては悪いけれど、オリックスのT-岡田、広島の堂林翔太などは、とっくの昔に筒香や鈴木のような存在になっていなけりゃいけなかった」
確かに、岡田は2010年に初めて本塁打王のタイトルを獲得、堂林は14年に140試合出場を果たし、両者とも将来の主砲として大いに期待されていた。が、それから数年後の今季はどちらもほとんど二軍暮らしである。村上が彼らの二の舞になる可能性がないとは、誰にも言えない。
そうした状況を踏まえてか、先のサンスポの専属評論家・江本孟紀氏は「近本に軍配を上げたい」としていた。投票は関東と関西で割れる可能性が高く、関西の票は近本に集中するが、完投が村上一辺倒になることはないだろうと見ている。
ただ、どちらが新人王に選ばれるにしても、選に漏れたほうには、NPBから新人特別賞が与えられるのではないだろうか。過去にも1998年のセ・リーグは中日・川上憲伸が新人王、巨人・高橋由伸、阪神・坪井智哉、広島・小林幹英が特別表彰。2013年のセ・リーグもヤクルト・小川泰弘が新人王、巨人・菅野智之、阪神・藤浪晋太郎が新人特別賞を受賞したケースなどがある。
17年のセ・リーグは中日・京田陽太が新人王、DeNA・浜口遙大が新人特別賞だったが、このときは私もどちらに新人王の票を入れるべきか、随分悩んだ。
この年、京田はショートとして141試合に出場、長嶋の記録にあと1と迫る当時のセ・リーグ新人歴代2位149安打、打率2割6分5厘、4本塁打をマーク。ただし、個人成績だけを見れば新人王の資格は十分でも、中日の順位は5位だった。
一方、浜口はこの年、10勝(6敗)で新人左腕としては球団史上59年ぶりの2桁勝利を記録。DeNAも2年連続AクラスでCSを突破し、19年ぶりに日本シリーズへ進出しており、浜口もポストシーズン2勝を挙げた。が、レギュラーシーズンでは規定投球回数に達していなかった。
この世界は1シーズンを通して一軍に登録され、先発投手はローテーションを、野手はレギュラーポジションを守り通してこそ、一人前のプロと言える。この大前提に従って、私は京田に一票を投じた。今年もシーズン終了まで村上と近本の活躍と成績をしっかりと見極めてから最終決断を下したい。
(一部敬称略)
○サンケイスポーツ『ヤクルト・村上、阪神・近本とのハイレベル新人王レース』(2019年9月18日付)
○同【週刊エモト!専属評論家・江本孟紀】『セ新人王レースは近本に軍配か!?』(同)
○朝日新聞デジタル『新人の安打記録か、10代最多本塁打か セの新人王争い』(2019年9月17日配信)○WEDGE Infinity【赤坂英一の野球丸】『大谷のMVPが満票ではなかった理由』(2016年12月7日配信)
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