2024年12月22日(日)

赤坂英一の野球丸

2019年9月11日

筆者撮影、以下同

 「カープも自前の博物館を新設するべきではないか。ファンが気軽に足を運べて、2世代、3世代で楽しめるようなミュージアムを」

 最近、広島カープのファン、後援者、地元マスコミの関係者から、そういう声を聞く。1950年に結成されたカープは来年、球団創立70周年の節目を迎える。そこで、2016年から3連覇し、絶大な支持と人気を得ているいまこそ、「ファンがそこへ行けばカープの歴史を振り返り、往年のレジェンド(伝説的選手)と触れ合える施設を球団がつくってはどうか」というのだ。

 そうした声があがったきっかけの一つが、カープが25年ぶりに優勝した16年、広島市の商工センターにある泉美術館で始まった「見る・知る・楽しむ カープ物語」という展示会である。この年の第1回は50年の球団創立から75年の初優勝まで。17年の第2回は79、80、84年の日本一を頂点とする黄金期。18年の第3回は25年間の低迷期を経て16年にふたたび優勝するまで。そして今年、現在開催中(7月11日~9月29日)の第4回は16、17、18年の3連覇の足跡と、これまでの歴史を区切り、テーマを絞って、選手や試合の写真を展示している。

 写真のほかにも、チャンピオンフラッグのレプリカをはじめ、往年の名選手が使用した用具やユニフォームのほか、今回は16年のMVP・新井貴浩さんの人形や銅像まで陳列。往年のエース・北別府学さんのトークショー、カープの苦難の歴史を振り返る紙芝居など、家族連れなら3世代で楽しめる企画もある。

 一際来場者の目を引く今回の〝大作〟は、展示室の壁一面を占める全長12メートルの年表「カープ栄光の軌跡」だ。広島に生まれ育ち、子供のころから50年近くカープを見ている私ですら、初めて知ったこと、すっかり忘れていた逸話や事件が少なくない。

 16年の第1回、17年の第2回には、その年までにカープに入団、在籍した選手、監督、コーチ全員名前を網羅した「カープ名鑑完全版」を掲示した。その数、17年7月時点で859人。これもフロアを仕切るパーテーションの一面を占めるほどの大きさだった。

 こういう資料的価値の高い労作、及び選手や試合の写真のほとんどは、地元の中国新聞社が提供している。そして、「カープ物語」の開催期間が終了すれば、ふたたびファンの目に触れる機会はしばらくの間、失われるのだ。いかにももったいない話ではないか。

 中国新聞編集委員として第1、2回の展示会に関わった増田泉子さん(現中国新聞広告社)が言う。

 「カープに関する写真や新聞記事など、弊社が球団創立の50年以来、報道してきた記事や写真は膨大な量に上ります。そうしたものが、いまの若いファンに日常的に触れてもらえるように、アーカイブ化やオフィシャルな博物館で常設展示が実現したらいいと思います」

 中日はナゴヤドーム内部、ロッテはZOZOマリンスタジアムの敷地内にファンのためのミュージアムをつくり、試合の行われる日に入場者に無料開放している。阪神も甲子園にある甲子園歴史館の一部で「阪神タイガース史料館」を常設。ソフトバンクは球団の博物館ではないが、王貞治球団会長の名を冠した「ベースボールミュージアム」をヤフオク!ドーム内部につくった(18年から一時閉館中、20年春リニューアル・オープン予定)。

 DeNAも49年の大洋ホエールズ創設から70周年を迎えた今年、記念事業の一環として横浜スタジアム内部に「70th ANNIVERSARY MUSEUM」を新設した。50年や98年の優勝トロフィー、歴代のユニフォームをはじめ、写真や展示品を年代別に分け、約2カ月ごとに入れ替えて展示している。


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