2024年7月25日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年3月26日

薄熙来の解任で打撃受ける「左派」

 自由主義派に反対の立場で論陣を張る左派の人たちは、「烏有之郷」(ユートピア)のインターネットサイトなどで薄熙来の進めてきた政策に支持を表明してきた。

 その代表的人物の1人である北京大学教授の孔慶東は自身の持つインターネット番組で、薄熙来の免職を「反革命政変」であり、民衆は「権利を守り」、「暗闇に対抗すべき」と呼びかけたところ、3月19日に同番組は突然放送停止になった。別の有名な左派学者・司馬南は薄熙来と非常に近い関係にあると言われているが、微博(ミニブログ)上では、米国に逃亡しようとしたところ、国家安全に関わるとして北京の空港で拘束されたとの噂まで流れた。

 「烏有之郷」へのアクセスは現在部分的に制限されており、「重慶経験」と題した特設ページも削除されている。このような事例から、薄熙来の解任によって、左派が打撃を受けていることは確かだ。

ミニブログに書かれた過激なコメント

 しかし、ミニブログで100万人規模の抗議デモ行進への参加が呼びかけられるなど、左派勢力は巻き返しを図ろうとしているとの見方もある。前出の大学教員の友人に「いわゆる左派に共鳴する人というのは過激な少数者なのか?」と聞くと、「そうとは言えないようにも思う。判断が難しいが、一般的な人の間にも過激な考えを持つ人が増えている」と言う。

 「烏有之郷」のコメントページには、自由派の名簿が掲載され、「殺してやる!」と書き込まれている。「政府がアクセスを制限しているのも、こうした過激な言動を抑える目的があるのだろう」と友人は指摘した。「生命の重みを理解しない人たちが増えるということは恐ろしいことだ。我々教員は焦っている。教育の場でいくらがんばって学生たちに自由に思考する能力をつけさせようとしても、効果が出るまでに時間がかかる」。

 中国政府は「左」の声を無視するわけにはいかないだろう。毛沢東時代への回帰は、金と権限を牛耳る現在の既得権益層への反抗を示している。現在の中国は、貧富の格差が驚異的な水準にまで拡大し、役人の腐敗が当たり前のようになっている。

「3・11」 中国のネット上にあふれた「愛国=抗日」

 日本からこうした中国の動きを見た時、状況はより複雑に映る。なぜなら、左派や左派的な思考をする人の相当数が「愛国=抗日(日本に抵抗する)」の考えで主張を展開しているからだ。

 3月11日、中国の多くのインターネットメディアは東日本大震災の1周年を特集するページを設けた。それらのコメント欄を眺めていると、「このような写真を見て堅実な民族性に敬服します。我々は彼らから学ぶことは多いでしょう」といった書き込みは非常に少なく、大半が「311記念!もっと多くの311が日本に降りかかりますように!」、「次回はもっと強烈なのが来ますように!」、「これは日本人が受けるべき当然の懲罰でしょう。こんなぐらいなんなの。南京大虐殺を比べてみなさいよ。中国では30万人以上が死んだのよ」といった目を疑うようなものだった(大手ポータルサイト探狐<SOHU>の特集ページを参照)

 先の大学教員の友人は、あるネットユーザーに「あまりにも徳に欠けたコメントだ」とメッセージを送ったが、「相手が強烈な反論を繰り返すので答えようがなく、無視するしかなかった」と顔をしかめていた。

 こうした過激なコメントが数多く見られたのは、河村たかし名古屋市長の南京に関する発言が影響したからだと考えられるが、それにしても被災者は南京事件と直接的に何の関係もない。冷静な判断に欠け、単純な「敵と味方」という構図に基づく、ある意味で「暴力性」の強い言葉が生産されている。


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