Wedge REPORT

2019年11月13日

»著者プロフィール

本州以南と若干の温度差も

 立命館大学が代表機関を務めるコンソーシアムには、農機メーカーのヤンマー、機械メーカーの豊田自動織機、ドローンメーカーのエンルートといった多くの企業が参加する。そうではあるけれども、あくまで産地のニーズに根差したプロジェクトだ。中心的な役割を果たす1人であるJA鹿追町の今田伸二さんは危機感を口にする。

 「労働力のうち学生の率が異常に大きくなって、今年が半分くらい。(地域に)短期的に働いてくれる人はほとんどいない」

 農家の労働支援に入る人の中で、アルバイトの率が2016年から年々伸びている。農繁期に大量の労働力を必要とするけれども、もはや地域内では到底確保できず、東京を中心にした都会からくる学生アルバイトに頼るしかない状況なのだ。人の確保に不安を抱えていては、産地としての存続がおぼつかない。どう対処すべきかと考え、たどり着いたのが「省人化」だった。

 今回の実証には他産地の農家も参加していた。業務用野菜を生産する静岡県の農家から出た次の質問は、多くの産地の声を代弁するものだと感じる。

 「機械化すると、300キロは入る鉄コン(鉄コンテナ)で、280とか250キロしか積めなかったり、もしくは切り損じたものも入ったりするかもしれない。そういったときに、クレームで返品されると、すごくつらい。新しいトライをしたときに、買って下さる側にはある程度受容してもらえるんでしょうか」

 人手で隙間なく詰め込むのと違い、隙間ができることで積載効率が落ちないか、不良品が混じらないかという心配だ。これに対して今田さんは人をゼロにするわけではなく、そうした問題が生じないように適切な人数を使う方針だと話した。積載効率については多少落ちる可能性があるとした上で、こう続けた。

 「このまま生産が落ちるよりはいいのではないか。よくあるのは、こうじゃなきゃダメだとずっと頑張って、生産できなくなること」

 農家が減るのは目に見えていて、現状の人手に頼るやり方がいつまでも続かないのは明らかだ。今の流通がこうだからと何も変えずにいたら、将来がない……。このやり取りを聞いていて、鹿追町と静岡の農家の間に若干の温度差がある気がした。産地としての存続に対する危機意識の差ともいうべきか。このズレは、上記のやり取りに限らず、鹿追町側と本州以南からの参加者との交流を見ていて何度も感じた。

 ただ、北海道が直面している人手不足、経営面積の増大という課題は、本州以南でも近く深刻化することが統計的に明らか。北海道を特殊だと片付けず、そこに学ぶ姿勢が必要だ。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る