最近は共働き世帯が増えていることから、通勤に便利な駅に近いマンションが好まれる。ただ、パワーカップルと呼ばれる世帯の合計年収が1500万円以上ある共働きであっても23区内で、7000万円台まで上昇した高額マンションを購入することは躊躇してしまうのではないだろうか。それなら、新築よりも平均30%ほど安く買える中古を買って、自分の好みに合わせてリノベーションしようという動きになっているようだ」とみている。
ただし、中古へのシフトが起きているのは首都圏のマンションに限った話だ。現状でも全国における中古の流通シェアは、マンションなどの共同住宅、戸建てを合わせても14・5%という低水準で推移している。
18年に行われた住宅・土地調査(総務省)によると、住宅総数は6241万戸。しかし、その13・6%に当たる849万戸がすでに空き家となっている。マンションの戸数は654万7000戸あるが、老朽化が進んできている。
また、少子高齢化も進み、人口は減少傾向が続く。世帯数の推移を見ると、23年の5419万世帯がピークで、以後は減少し、40年には5076万世帯になる。つまり、人口と世帯数の減少により、住宅需要の先行きは頭打ちになるのは明白だ。
それにもかかわらず、人口と世帯数の構造変化に対応した住宅政策がとられてきていない。
国はこの十数年にわたって、大手デベロッパーによるタワーマンションに代表される新築マンションや戸建て住宅を建て続けることが経済成長につながり、国民総生産(GDP)の増加要因になるとして歓迎してきた。
新築優遇税制と不透明な商慣行
それを下支えしてきたのが、税制面での優遇策だ。新築と中古住宅では、減税適用条件に違いがある。所得税では、年末ローン残高の1%の所得税額が13年間減税(住居面積が50平米以上で所得合計額が3000万円以下)される。一方、中古の場合、この条件を満たした上に、木造は築20年以内、マンション(新耐震基準)は築25年以内の建物に限定される(耐震対応をするなど、適用除外の方法もある)。また、固定資産税も、新築の場合は半分に軽減(戸建て3年間、マンションは5年間)される。一方、中古の場合、減税はない。
こうした状況に対して、さくら事務所の長嶋修会長は「首都圏の中古マンションに関しては確かに中古の取引が増えているが、戸建てについてはまだ新築の方が買いやすい。住宅ローンの減税についても、新築優遇を止めないままで中古の適用条件を少し緩和しており、依然として新築優遇には変わりはない」と、指摘する。「新築と中古のローン減税や補助金が同じならば、誰もが新築を買う。欧州では中古を明白に優遇してるように、日本でも新築から中古に舵を切るべき時が来ている」と訴える。