住宅資産評価の見直しを
中古の取引を拡大するためには、その資産評価をどれだけ正確にできるかもポイントになる。18年から仲介業者は、重要事項説明の際にホームインスペクション(建物状況調査)制度について説明が義務付けられたが、インスペクションはあまり普及していないという。
そもそも日本の場合、資産価値を築年数で計算する傾向が強いため、年数が経過すると資産価値が大幅に下落してしまう。特に戸建ての場合、30年以上経過すると建物の資産価値はゼロで土地値だけとみられることが多い。
住宅ローンの借り入れ・借り換えサービスを提供しているMFSの中山田明社長は「リノベーションした中古の資産評価を誰がするのか。金融機関にとってリノベーションによるバリューアップを評価するのは難しく、結局、鑑定企業に頼るしかない。
不動産のデータベースもリフォームなどの過去履歴をきちんとつかんでいないため、データベースだけでは評価しにくい。中古の評価を正確にするように義務付けられ、そうした情報にアクセスできるようになれば、住宅ローンがつきやすくなり中古の取引拡大につながるのではないか」と話す。
中古流通の拡大に向けて課題は山積しているものの、逆に言えば、日本の中古市場には大いに伸びしろがあるということでもある。「新築信仰」と「中古市場の使い勝手の悪さ」が存在する住宅市場だが、足元では物件情報の非対称性解消へ向けた動きがあり、また大手住宅メーカーでも中古部門に力を入れ始めた。Wedge12月号特集『「新築」という呪縛』では、こうした中古市場活性化に向けた業界の最前線の動きや、海外での健全な中古市場形成の仕組みを紹介する。
■「新築」という呪縛 日本に中古は根付くのか
砂原庸介、中川雅之、中西 享、編集部
PART 1 中古活性化を阻むしがらみ 「脱新築時代」は来るか?
PART 2 「好み」だけではなかった 日本人が”新築好き”になった理由
PART 3 米国の中古取引はなぜ活発なのか? 情報公開にこそカギがある
COLUMN ゴースト化した「リゾートマンション」の行方
PART 4 中古活性化に必要な「情報透明化」と「価値再生」
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