顧客の望む暮らしを実現させることを重視する一方、将来の売却も想定し市場価値が担保されることも重要だという。同社ブランド戦略部の田形梓氏は「提案の際に顧客に確認するのは将来ビジョン。将来的に住み替えの可能性のある顧客に対しては、物件選びの時点で立地や管理状況などが売却の際に重要になることを伝え、リセールバリュー(再販価値)を意識した提案をしていく。先のことを早い段階から意識してもらうことで、かしこい選択ができ、多くの中古活用にもつながる」という。
物件の購入を検討している顧客にとって、リノベーションのイメージがつかみにくく、心理的なハードルも高い。そこで同社では、各地にショールームを設けているのも特徴的だ。渋谷にあるショールームは、築54年のマンションの一室を活用。当時の写真や図面をもとに、部屋のレイアウトや配管が変更された部屋を見ることができる。「リノベーションで実際に何ができるのか、目で見て実感してもらうことで不安も解消される。新築と迷ってショールームに来場したが、何を大切にしたいかを整理するなかで、新築だけにこだわる必要はないと気づき、こちらを選択する人も多い」という。
「定額住み放題」「企業保養所活用」
続々と出現する空き家サービス
中古のうち、引き取り手のいない空き家は、今や国内で約850万戸にのぼり、社会問題となっている。そんななか、あえて地方の空き家に注目するビジネスも盛り上がりを見せる。価値ある家を見いだし、高額で買うという住宅の形ではなく、「定額制で好きな期間住む」、「100円で買う」という斬新な発想で、捨てられたはずの中古住宅が再度復活を遂げている。
月額4万円で、鳥取や徳島、福井など、全国25カ所(11月7日時点)にある空き家や別荘を改装した物件に住むことができるサービス「ADDress」。使用されていない物件を購入、また部屋を借り上げて会員に貸し出す。光熱費やWi−fi、家具・家電などの共有利用も費用に含まれる。
シェアハウスやコワーキングスペースなどの利用が活発になるなか、多拠点で居住できるメリットに人気が高まる。サービス発表以降、3300件を超える問い合わせがあった。場所を問わず働ける業種に就く、あるいは業務と余暇を兼ねたワーケーション目的といった若い世代ばかりでなく、2拠点生活に憧れを持つ50代以上のアクティブシニア層からの問い合わせも多いという。