2022年12月10日(土)

Wedge REPORT

2019年12月9日

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 これらの取り組みはまだ始まったばかりで、市場規模も小さい。うまく「再生」できる空き家は、全体の一部に限られるだろう。本質的には、消費者が新築に限らず、中古を住まいや生活の場としての選択肢に自然に組み込めるような環境が望まれる。

 利用者が多くの情報を得られるシステムの整備と同時に、きちんと物件を維持管理する利用者の努力、買い手の住まいに関する理想を実現するための事業者の努力がなければ、中古の活用は行き詰まり、空き家の増加や、新築重視の無秩序な開発が続きかねない。新築という呪縛を解くためには、いかに中古の価値を引き出せるかにかかっている。

有識者に聞く中古活性化アイデア

 中古活性化のためにどういった施策が有効だろうか。情報の非対称性に関して、不動産市場に詳しい椙山女学園大学現代マネジメント学部教授の前川俊一氏は「住宅取引所」の構築を提唱する。「中古購入の際、消費者に情報が圧倒的に少ない。業者の仲介ではなく、売り手と買い手が直接情報をつかめるシステムがあれば良いのではないか。売り手が公に認定された取引所に住宅を登録し、修繕状況やリフォーム履歴などを記載し、買い手はその情報をもとに売り手と交渉するイメージだ。国や民間主導で構築できないか」と語る。

 また「AI技術への期待が高まるなか、ビッグデータの蓄積が不十分だと、分析やサービスの進化も難しい。目に見える形での情報の蓄積と公開が重要になる」とも話す。

 中古の活性化のために総量規制の概念も重要になる。野村総研グローバルインフラコンサルティング部長の榊原渉氏は「新築をすぐに止めることは難しいので、『新築権』という考えを提案したい。中古を除去することで得られる、住宅新築のための権利だ。一般的に木造戸建てを除却する際には100万円がかかると言われる。売却見込みのない家を持つ人が100万円で除却しこの権利を得て、新たに建てたいと考えるデベロッパーなどに100万円で売却する。こういうった仕組みが機能すれば、住宅市場をある程度管理できるのではないか」と提案する。

現在発売中のWedge12月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■「新築」という呪縛  日本に中古は根付くのか
砂原庸介、中川雅之、中西 享、編集部
PART 1  中古活性化を阻むしがらみ  「脱新築時代」は来るか?
PART 2      「好み」だけではなかった 日本人が”新築好き”になった理由
PART 3      米国の中古取引はなぜ活発なのか? 情報公開にこそカギがある
COLUMN  ゴースト化した「リゾートマンション」の行方
PART 4      中古活性化に必要な「情報透明化」と「価値再生」

  
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◆Wedge2019年12月号より

 

 

 

 

 

 

 
 

 

 
 

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