運営するアドレス(東京都千代田区)代表取締役の佐別当隆志氏は、「利用者からは拠点を増やしてほしいとの声があがっている」と語る。物件は自治体からの紹介や、直接家主からの申し出も多いというが、公共交通の利便性や保存状態を見ながら活用できるかを決定する。利用者同士が家の中で交流し、そこから新たなコミュニティーが生まれることもしばしば。来年1月には全日本空輸もADDressと連携を開始予定で、月額制で全国の指定路線・便を利用できるサービスの実証実験が始まるなど、地方の空き家が新たなビジネスを創造している。
空き家に悩む行政もまた、民間との連携で活性化を企図する。大津市には、同市北部の琵琶湖畔に企業保養所が100カ所ほどあり、そのうち使用予定のないものが11軒あると判明した。そこで市では、観光資源としての活性化と、空き家の荒廃による住環境や防犯上の影響などを考慮し、保養所を宿泊施設として利活用する施策を今年から開始。民間事業者に参入を募った。
すでに4つの民間業者が市と調整を進めているという。また前述のADDressともパートナー連携を結び、今後サービスに協力する。市は保養所だけでなく、市内中心部で空き家の目立つ町家の活用も検討しているという。
古く、住むのに適さないイメージのある空き家。あえてそのありのままを見せながら、活用方法を提案して活性化させようという取り組みもある。
全国の空き家物件の活性化に取り組むあきやカンパニー(東京都渋谷区)と、遊休地の企画・開発などを手がけるYADOKARI(横浜市)が共同で、「空き家ゲートウェイ」サービスを開始。空き家を売りたい人と買いたい人を結び付け、直接売買契約をしてもらう。サイトの掲載手数料や契約手数料は不要。「100均物件」と目を引くコンテンツを展開し、全国にある空き家を、100円ないし100万円で売却する。ほかに固定資産税、庭木の手入れに関わる費用なども負担する必要はあるが、物件の値段そのものはこのどちらかだ。
7月のサービス開始後、物件の掲載依頼100件、そして物件活用希望の問い合わせが200件以上あった。先日、第1号として宮城県の100円空き家が売れたという。サイトでは、空き家の情報について写真とストーリーで展開、「セカンドハウスや部屋数の多さを生かしてゲストハウスにしては」といった提案と、「修理は必須、納屋はボロボロでほとんど使用できない状態」などの注意点や不便な面も示し、利用者に利用する際のイメージを想起させる。
あきやカンパニー取締役社長の久保暁育氏は「潜在的に地方の物件をリノベーションして住んでみたいという若い世代は多い。だが、サイト上で単に物件のスペックを表示するだけでは、活用のイメージがわきにくく、ふさわしい物件に出合うことが難しいため、このサービスを開始した」と語る。