2024年7月15日(月)

Wedge REPORT

2012年4月20日

 リーの懐にはハワイにあった家を売って得た資金があった。警察が事情を聞いたとき、彼はバックの中にさらに21000ドルの現金を入れていたのだという。結局、リーは軽犯罪で捕まり、2週間拘束された。そして、裁判所から、2年間、ディスカバリーチャンネルの社屋に500フィート以内に近づいてはいけないという命令を受けた。

 リーが籠城事件を起こしたのは、その命令の法的拘束力が解けた直後だった。

恐らく世界初
環境保護目的の自爆テロ

 爆破装置を身体に巻き付け、社屋の一階ロビーに人質3人を取って立てこもったリーは結局、事件発生から4時間後、周囲を取り囲んだFBIの特殊機動部隊(SWAT)により射殺された。

 リーとの交渉役を担ったベテラン捜査官とのやりとりがまもなく公開された。

 「乱暴なことをするなよ。君たちがどんなことをしようとしているのか僕は知っている。乱暴なことはするな」

 リーがそう語った直後、すきをみて人質の1人が走り出した。その瞬間、SWATが強行作戦を決行し、リーを殺害したのだった。

 アメリカのエコテロリズムの専門家、ローレンス・ライカ-准教授は自らの著書に、リーの事件について書き記し、「米国で初めて環境保護の目的で行われた自爆テロ行為。恐らく世界でも初めてだ」と指摘した。ライカ-氏はこう分析した。

 「リーは目的を遂げなかったけれども、彼は数時間にわたりテレビやインターネットで注目を引きつけることに成功した。もし彼の計画がよりよく遂行され、優れた武器や爆破装置を有していれば、事態は大量殺人に発展しかねない状況にあった」

 世界中の多くの人が知る放送局を襲ったこの衝撃的な事件で、リーの主張は幅広く伝えられることとなった。リーは、ネット上に「地球を救え」と題して、約1200語にわたる犯行声明文を作り、こんなことを主張していた。

 「汚らわしい生活習慣を続ける子供たちをこれ以上増やしてはいけない。我々が暮らすこの地球を守ることはすべての人間の責任だ。親が現在の汚染源である一方で、子供たちは将来、地球に破滅を引き起こす汚染源となる。これ以上、ベイビーはいらない。人口増加は差し迫った危機だ」

 「世界は、人類が引き起こした問題の解決を促進させるテレビ番組を必要としている。地球の破壊に導くような人々を堕落させる番組はいらない。そして、環境に有害な人間をさらに増やすように奨励する番組もいらない」

 「私はディスカバリー・チャンネルに、彼らが世界中に放送するチャンネルで新しい番組のラインアップを作ってほしい。私はその証明がほしい。地球と残された野生生物を守るために、独創性のあるアイデアを大衆に呼びかけるような新しい番組を作ってほしい」

 文末には、「これがリーの言葉であり要求である」という文句がつけられていた。事件から約1年半が経過したが、インターネット上では今も、リーの主張を引用したサイトがあふれている。中には、彼の行動を英雄視する動画や文章もみられる。


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