Wedge REPORT

2020年1月6日

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 思わぬとばっちりと言えそうだ。日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告が会社法違反(特別背任)罪などで起訴されたものの、保釈中に国籍のあるレバノンへ逃亡。日本のみならず世界中に大きな衝撃を与えた前代未聞の一件が、スポーツ界にも影響を与えるのではないかと懸念されている。Jリーグの横浜F・マリノスに関する株式売却の噂だ。

(Naftizin/gettyimages)

 長きに渡って低迷していたものの昨季は15年ぶりにリーグ優勝。名門復活を果たし、再び上昇気流に乗ろうとしているタイミングでクラブには水面下で身売り話が浮上しているという。メーンスポンサーを務める日産自動車が経営難により、マリノスの買収先を求めて動いているというのである。1972年に創部された日産自動車サッカー部時代以来、親しまれ続けてきた名門チームの母体が変わるとなれば、それなりのハレーションも覚悟しなければいけないだろう。

 しかしながら現場やクラブ内の反応は意外にも冷静だ。身売り説が浮上していても、それほど慌てふためく様子は見られない。むしろ「もう中途半端になっている日産の手からマリノスは完全に離れたほうがいい」との声も数多く聞こえてくるぐらいだ。

 5年前から実質上、クラブ運営に日産はほぼ携わらなくなっている。2014年にイングランド・プレミアリーグのマンチェスター・シティなど世界8つのサッカークラブの持株会社であるシティ・フットボール・グループ(CFG)がチーム株式の19・95%を保有するようになり、少額資本参入という形ながらも傘下クラブのビッグデータをフル活用してマリノスの運営に関わるようになっているからだ。

 実際にCFGのルートを生かして招聘した元豪州代表監督のアンジェ・ポステコグルー監督が今季は就任2年目で自らのサッカースタイルをチームに浸透させることに成功している。もう今のマリノスには日産のカラーはない――。もちろん昔から応援して伝統を重んじる人の中には「マリノス=日産」と未だに頑なな信条を貫く傾向もあるようだが、それでもサポーターの多くはドラスティックな考え方に切り替わりつつあるという。

 ゴーン被告によって、イメージもすっかり悪くなってしまった日産から一刻も早くオサラバしたい、CFGによって日産に頼らず別のチームへと変貌を遂げたマリノスは新たにタッグを組んでクラブ運営を担ってくれる親会社を求めている、日産も足かせとなっているマリノスの経営権を手放し、身軽になって何としてでも〝ゴーンの悪夢〟を振り払い、経営再建に乗り出したいというのが本音ではないだろうか。

 ところが、そのシナリオに対してもレバノンに逃亡したゴーン被告が蛇のような執念深さを貫き続けることによって、結果的に足を引っ張られかねないというから穏やかではない。

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