Wedge REPORT

2019年12月26日

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 一体、何が起こっているのか。韓国の聯合ニュースが25日に報じたところによれば、サッカー女子の北朝鮮代表が、来年2月に韓国の済州島で開催される東京五輪アジア最終予選の出場を取りやめたという。アジア・サッカー連盟(AFC)に対し参加しない意向を伝え、その詳しい理由は明らかにされていないとのことだ。

(sezer ozger/gettyimages)

 サッカー女子のアジア出場枠は2。東京五輪の最終予選ではA組、B組それぞれの上位2チームが来年3月開催のプレーオフに進出して争う。韓国はB組に組み込まれ、ここにはベトナム、ミャンマー、そして北朝鮮も入っていた。しかしサッカー女子でアジア強豪国の北朝鮮が参加を取りやめたことで代替出場国も加わらず相手は格下のベトナム、ミャンマーのみとなり、韓国のB組1位突破が確実視されるようになった。

 対するA組で1、2位突破が見込まれそうなのはそれぞれオーストラリア、中国。プレーオフではB組1位とA組2位が対戦することから韓国国内では実質上、五輪出場権のかかる準決勝で戦力の拮抗する中国に勝てば「東京行き」のキップを手にできると主要メディアも大騒ぎしている。ネット上の反応を見る限り、韓国国内のユーザーたちの反応もおおむね「歓迎」の意向を示しているようだ。

 北朝鮮はFIFA(国際サッカー連盟)の女子ランキングで7位・オーストラリア、10位・日本の後塵を拝しているとはいえ、アジア3番手の11位。開催国として東京五輪出場権を得ている日本を除けば、アジアの2枠に入る可能性は高いとみられていた。労せずして北朝鮮が〝消滅〟してくれただけに、大韓サッカー協会(KFA)や韓国女子サッカー関係者、多くの韓国国民も「ガヌン・ナリ・ジャンナリダ」(「棚から牡丹餅」の意味を成す韓国語のことわざ)を連呼している。

 だが、冷静に状況を鑑みれば北朝鮮の決断は不可解だ。サッカー女子代表に関しては今月18日まで韓国・釜山で行われていた東アジアE―1選手権にも出場権を得ていながら、一方的に不参加を表明。台湾に出場を譲る格好となった。しかも北朝鮮は同大会を3連覇中で満天下にスポーツ強国であることを誇示する意味でも、出場には大きな意義があったはずだ。しかしながら、あっさりと辞退。「?」は漂うものの、その背景には政治的要因が絡んでいるのは言うまでもあるまい。

文在寅大統領にとっては由々しい事態

 南北関係の悪化だ。大陸間弾道ミサイル(ICBM)のエンジン燃焼実験とみられる「重大実験」を繰り返すなど金正恩朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮の度重なる挑発行為は、ますますエスカレートする一方。対北への融和政策を唱え、自身の支持率キープにつなげようと目論んでいる韓国・文在寅大統領にとっては由々しい事態と言っていい。何とかスポーツを通じても南北友好ムードを深め、2045年までの朝鮮半島統一を成し遂げたい――。

 そんな夢物語のようなシナリオをぶち上げることで文大統領は支持率回復につなげたいところだったが、どうやら絵に描いた餅で終わりそうな気配となっている。北朝鮮側が女子サッカー代表チームのアジア最終予戦参加を辞退したことは、文政権に対する「最後通告」と韓国国内のスポーツ関係者の間で見る向きが強まりつつあるからだ。KFAと密な関係を築く在日の韓国人ウォッチャーはこう解説する。

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