2024年4月25日(木)

Wedge REPORT

2019年12月26日

 それだけではない。15歳以下の代表メンバーが集う「アリスポーツカップ国際ユースサッカー大会」が今月26日から中国・昆明で開催される予定だったが、大会9日前に中止が決まった。韓国、北朝鮮、中国、タイ、ウクライナから複数チーム、さらに非公式の南北女子サッカーチームも2チームが参加し、関係者の間では南北関係を良好なムードに変える大会として期待されていた。しかし韓国メディアによれば、この大会も北朝鮮側が「内部事情により派遣できない」と通達してきたという。

2032年夏季五輪の南北共同誘致

 スポーツを巡っても北と南の亀裂は決定的なものとなっている。それでも文政権は国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長を抱き込み、24年の冬季ユース五輪を韓国と北朝鮮の南北合同共催構想を具現化させる方向へ導こうとするなど「夢」を諦めるつもりはない。その先にある2032年夏季五輪の南北共同誘致も言わずもがなだ。

 だが、韓国国内のスポーツ関係者たちは文政権の南北融和政策にもはや辟易しているのが現状のようである。前出の韓国人ウォッチャーは次のようにも続けた。

 「東京五輪に向けてバスケットボールの女子、ホッケーの女子、柔道の混合団体、ボート男女の4競技などで南北の合同チームによる出場権獲得もIOCから承認を得られていたが、そのうちホッケーの女子は五輪予選に参加できずに断念。他の競技も残された時間は僅かかしかなく、今のままでは頓挫するでしょう。

 ただ、韓国国内では北朝鮮について『いい加減に〝夢〟から覚めよう』という姿勢が強まっている。もちろん〝夢〟とは、南北統一を夢見る文大統領に対する皮肉。結成する側の選手たちも『なぜ政治的な問題に自分たちが付き合わされ、利用されなければいけないのか』との疑問の声が噴出しているのです。

 10月に平壌で行われたカタールW杯予選で北朝鮮の選手たちから韓国代表の面々が危険な反則プレーを乱発されたこともあって『あんな野蛮な国と一緒にチームを結成することなどできない』と口にする者も少なくない。こうした真実を文政権は見定める必要性があると思います」

 北朝鮮に大きく振り回される文政権のダッチロールまがいの南北融和政策によって、韓国のスポーツ界は人知れず悲鳴を上げている。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。


新着記事

»もっと見る