2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2020年1月27日

「指先一つ」のスピード感があだに
一度立ち止まって警戒を

 キャッシュレス決済拡大に伴う犯罪の増加に、官民はどう対応すべきか。ネット犯罪に詳しい神戸大学大学院工学研究科の森井昌克教授は、「利用者の不安を取り除くためにも、国は決済事業者の監理、特に決済事業の運用について十分管理を行い、小さな不備が見つかれば早期に是正勧告を行う体制を取らなければいけない」と国の積極的な関与の重要性を指摘する。

 サイバー攻撃に詳しい情報安全保障研究所の山崎文明首席研究員は、「米国などでは、企業が不正利用される恐れのあるドメインをあらかじめいくつも取得しておく。日本企業は対応が遅れたため、犯罪者が企業名と類似した文字列のドメインを取得し、詐欺メールが多発した側面もある。現在、米国ではなりすましメールを防御する仕組みを導入する企業が多く、日本企業もそういった先進事例に触れ、対策を検討する必要がある」と指摘する。

 ようやく明るみに出つつあるこういった犯罪だが、まだ氷山の一角だ。日本では企業などがサイバー被害をあまり報告したがらないという傾向がある。ビジネスに悪い影響を与えたくないからだ。だが被害実態を知ることなく、対策や改善は望めない。これには政府も危機感を抱いているようで、ある政府関係者によれば、「サイバー被害の報告を企業に義務付ける法案を提出する方向で話が進んでいる」という。

 ユーザー側の注意も一層必要だ。日本サイバー犯罪対策センターは、事前に正しいウェブサイトのURLをブックマークに登録しそこからアクセスする、各銀行のウェブサイトでネットバンキングのパスワードをメールなどで求めないことを確認するなどの対策を呼び掛けている。

 森井教授は「いま不正や詐欺にあっていないからといって、将来安全とは全く言えない。新たな危険性や脆弱性(ぜいじゃくせい)は常に生まれる。ネットバンキングやスマホ決済利用の際、決済・送金のボタンを押す前には必ず一度止まることを心がけ、サイトのURLを確認するだけでなく、大きな額の決済にスマホ決済を用いるのは控えるなどの対応も必要」という。新しいシステムは、攻撃者にとって格好のターゲットだ。利便性の陰に潜む脅威にも、しっかりと目を見張る必要がある。

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